琉球紅茶ブランドで地域の活性化を~(株)沖縄ティーファクトリー 代表取締役社長 内田智子(沖縄)

【チャレンジ市場創造】世界の新しい紅茶産地「沖縄」の誕生

内田社長

(株)沖縄ティーファクトリー代表取締役社長の内田智子氏(沖縄同友会会員)は、当時勤めていた商社の仕事で2年間スリランカに在住。その時に、紅茶の知識やテイスティング技術、ブレンド技術を習得しました。その後、移り住んだ沖縄で、紅茶の栽培に適した赤土の存在に偶然気がつき、沖縄産紅茶の栽培と商品化に取り組んできました。今では、その高い品質が評価され、各方面から注目を集めるまでになっています。「沖縄県産琉球紅茶のブランド確立と、紅茶のある豊かなライフスタイルの実現」「沖縄県の産業活性化と、世界に向けた琉球文化の発信に貢献」をめざして活躍を続ける内田氏に、これまでの取り組みや今後の戦略などについて寄稿していただきました。

沖縄の赤土との出合い

 もう、10年以上前に沖縄本島北部のパイナップル畑を訪れたときに、足元に見覚えのある「赤土」をみつけ、沖縄に移住前に暮らしたスリランカの土壌を思い出しました。紅茶の国スリランカの山の上で、地元の人が赤土を手にしながら「この土が紅茶を作る」「肥沃な土地はお金をかければ作れるが、やせた赤土は神様しか作れない」と自慢されていた記憶がよみがえりました。

 自宅に戻り地球儀で沖縄を指差して左に真っ直ぐ動くと、紅茶の産地インドのアッサム地方にたどり着きました。世界の紅茶の樹の故郷であるアッサム地方と同緯度であることで、沖縄での紅茶生産を教えてくれたあの日が事業の始まりのように思います。

 沖縄ではデメリットと言われることの多い「赤土」ですが、その存在価値を紅茶なら表現でき、ソーシャル的にもさまざまな形で地元に貢献できる可能性を持ちます。しかし、そのままの気候や環境が紅茶生産において「優位性」を持つことに気がついてからも、実際に着手するまでには事業規模の大きさに戸惑い、時間がかかりました。

琉球紅茶ブランドのスタート

 いろいろな気持ちと情報の整理のあとに強い確信を持ち、会社を設立したのが6年前です。長く、紅茶ビジネスに身を置くことで得た専門知識をノウハウに生かし、福岡出身の私が沖縄で紅茶ブランドを立ち上げるご縁を頂きました。「武器を持たずに諸外国と交易する知恵と勇気の琉球時代」に思いをはせ、「琉球紅茶」と名付けました。

 価値を理解してくれる人が居るところが市場だと考え、海を渡るほどにブランド価値が増すことをイメージし、ロゴマークには創業のスピリッツ(精神)をこめて、現在の形となりました。ティーカップを持つ女性の横顔、海も島も盛り込んでほしいと欲張って注文をした上、何度も沖縄の人に見せながら「沖縄の人が一目見て、沖縄に見える」ことを目指しました。色も沖縄の感性を探り、朱色に近い赤を選び、外側のブランディングを進めました。

 中身においては、紅茶は茶葉を理論と技術をもって商品化して初めて価値が付くものなので、おいしくない間は販売を控えることで信用を得ながら販路を作りました。また、全ての紅茶が品質ごとに価値をもてるように、「琉球紅茶アッサム」「琉球紅茶アールグレイ」「琉球紅茶サンセットティー」などのセカンドブランドをつくり、ブレンド技術による商品開発を進めることで、品質を振り分け、高品質を生み出す形を取ったのです。

有機・無農薬栽培が基本

紅茶

 現在、金武町・恩納村・宜野座村にて契約農家による琉球紅茶生産組合が設立され、沖縄の産地化が進んでいます。基本は有機・無農薬栽培です。それが世界中どこにでも販売可能な世界基準だからです。

 産地化を決定づける上では、日本に国産紅茶優良品種「べにほまれ」を含む紅茶用の品種が存在していたことも大きなポイントでした。この4年間で当社が10万本の苗を育て、県内に供給可能な体制を確立し、商品価値を守るための産地ルールづくりに着手してきました。

 良質の紅茶は、適する環境で、適する品種を使い、適する技術で作らなくては評価されないので、「ブランドとは顧客との約束を守ること」と考えて努めてまいりました。

 2年間苗を育て、農家さんに託して定植し、5年目に茶摘した結果、テスト販売の2年前に新製品ながら伊勢丹新宿店の特選品「オンリーアイ」商品に選ばれ、幸運なスタートを切ることができました。

世界への販売も視野に

 またジェトロ(日本貿易振興機構)さんのご協力のお陰で、2年間の実績を持って、フランス・パリでもプレゼンを行い、好評を博すことができました。

 その結果、世界中に紅茶を販売するメーカーからの引き合いも始まり、パリでの発売が可能な販路の確保ができたのです。パリで認められれば世界で販売ができるからこそ、産地としてどこまで市場のニーズにこたえられるのか、事業サイズを測ることが今後の課題です。

 戦略としては、目指す市場を明確にするために販路を限定するとともに、できた紅茶はすべて良いものと悪いものを見分けるテイスティングと、作るたびに違う風味を一定の風味におさめるブレンド技術により、均質の商品を安定的に提供できるようにし、バーコードを貼り、流通するメーカーとなるように努力しております。

 これまでの出会いと情報は、作る紅茶の品質が集めてくれたように思います。私どもに紅茶を作らせてくれる農家さんと沖縄の土地に心から感謝しております。

 商品のラインナップは、ギフトや季節限定品を含めておよそ40種類。購入されるのは本物志向の紅茶愛好家が多い上、気軽に購入できる価格帯で本物が味わえると旅行者の方からも高い人気をいただいています。「琉球紅茶」を沖縄の皆様が自慢していただける品となるように、これからも「紅茶物語」を作る会社でいたいと思います。

会社概要

創業 2000年
設立 2005年
社員数 5名
事業内容 紅茶の製造・販売、 紅茶関連商品の開発・販売
所在地 沖縄県沖縄市山内
TEL098-989-7501
http://www.okitea.com/

「中小企業家しんぶん」 2011年 4月 5日号より