地域再生、企業存続に全力―全国に広がる大震災の影響深刻、「緊急要望」相次ぎ発表

東日本大震災・復興へ-地域と共に

 東日本大震災は、直接の被災地のみならず、全国に深刻な影響をもたらしています。被災地の同友会では、全国からいち早く届けられた救援物資を地域に生きる中小企業ならではのネットワークで確実に被災者の元に届けてきました。そして今、いよいよ地域再生、企業存続に向け、全力を尽くした活動が始まっています。現地の声や影響調査に基づいた緊急要望も相次ぎ発表されています。

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 福島第一原子力発電所被害の影響で今も被災状況が続く福島同友会では、3月14日に対策本部を設置し、17日に緊急要望を県に要請、22日には全会員に向けて「企業存続に向け全力を尽くそう」と理事長声明を発表。社員の安否確認に始まり、風評被害を避けるためにも取引先への正確な情報提供と経営意欲の発信、資金の確保を緊急に取り組むべき課題として呼びかけました。

 会員の安否確認がほぼ終わった宮城同友会でも、阪神大震災時の兵庫同友会の教訓に学び、22日には地域復興に向けた緊急融資や元金返済の一時猶予などを盛り込んだ緊急要望を県に提出しました。

 福岡、京都など被災地以外の7同友会が実施した影響調査(3月25日現在)では、物資不足や部品・資材の調達困難など、「影響がある」「今後影響がある」の回答が7割を超えています。

 中同協では、こうした現場の声に基づき、国に対し緊急要望をまとめていくとともに、国の各種施策の情報提供など、「中小企業憲章」でうたわれた「経済を牽引する力」を発揮して、連帯の力で復興していこうと会長談話を発表しました。

中小企業の現場の声を国政に―民主党中小企業政策推進議員連盟で要望・提言

 中同協は3月23日、参議院議員会館で行われた「民主党中小企業政策推進議員連盟」緊急総会に日本商工会議所など中小企業団体とともに出席し、東日本大震災の被災状況と復興に向けた同友会の活動を紹介し、早急に取り組むべき要望・提言を行いました。

 会議には、瓜田靖・中同協政策局長と松林伸介・東京同友会事務局長が参加。民主党からは議員連盟会長の増子輝彦議員をはじめ20数名の国会議員が出席。中小企業庁からは高原一郎長官などが同席しました。

 中同協からは、福島同友会の緊急要望を紹介し、ガソリンなど燃料の優先的確保や被災企業への休業補償、決済猶予措置などの切実な要望を強く訴えました。また、被災したすべての個人や企業の社会保険料免除の特例措置や税の納税猶予・減免措置、実情に応じた緊急融資と既往債務の返済猶予・凍結、事業再開のための事務所等の提供、復興事業の地元中小企業への優先発注など従来の枠組みを超える復興政策を構想することを強調しました。

 さらに、大阪や福岡、東京などの同友会の緊急影響調査をもとに、日本全体に被害が急速に広がっていると警鐘を鳴らしました。

 東京同友会からは、契約のキャンセルなどで多額の損害を被っている例が多発していること、計画停電への批判が多数寄せられていることなどを紹介し、停電の短時間化や週単位のシフト化などを提言しました。

 高原中小企業庁長官からは、景気対応緊急保証制度が終了する4月からセーフティネット保証(5号)を48業種で実施する予定を震災を踏まえて急きょ、原則全業種で運用することが報告されました。

 各議員からは、手形のジャンプや返済猶予措置、コミュニティ・商店街の再生、計画停電の負担軽減など発言が続き、黒字倒産多発への懸念も語られました。同議連は、引き続き連絡を密にしながら適切な対応策・政策を提言・行動していくことを確認しました。

【会長談話】連帯の力で大震災復興の支援を 中小企業家同友会全国協議会会長 鋤柄 修

 このたびの東日本大震災で被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。ニュースなどで伝えられる被害状況は、想像を絶するものです。被害は、東北地方だけではなく、関東など広範囲に広がっています。今こそ日本全体が心を1つにして、この困難を乗り切る時だと思います。中同協では、東日本大震災復興対策本部(本部長・広浜幹事長)を設置し、義援金・物資支援などの呼びかけを行っています。すでに全国の会員の皆さんから、さまざまな支援が寄せられておりますが、改めてご協力をお願い申し上げます。

 また地震と津波に加えて、福島第一原発の事故が重なるという、歴史上かつてない事態となっています。地域の皆様は大変な不安の中で過ごされていることと思います。原発事故は、近隣の農産物などにも影響を与えており、風評被害も心配されます。政府には、地域の方々が一刻も早く安心して暮らせるように、的確な情報を提供するとともに、早目早目に対策をうつことを望むものです。

 今回は、阪神大震災などの教訓も生かして、同友会事務局が情報センターとなり、初期段階からいち早く同友会独自の支援物資の提供ルートを確立することができました。特に被災地の近隣同友会の連携プレーが効果を発揮し、支援の大きな力になっています。

 今後も全国から可能な限り支援を行っていきますが、何といっても被災を受けた同友会の皆さんが力を合わせて立ち上がることが、復興に向けての最大の力になります。ぜひ中小企業憲章の理念を生かし、同友会の連帯の精神を発揮して、励まし合いながら、それぞれの地域で災害から立ち上がる大きな力になっていただきたいと思います。

 今回の復興は、期間的にはかなり長期になると思われます。粘り強く、継続して、復興や支援活動に取り組んでいきましょう。

「中小企業家しんぶん」 2011年 4月 5日号より