大震災からの復興と日本経済の再生に総力を

復興と財源確保に英知を結集しよう

 2011年3月11日に発生した東日本大震災は、史上まれにみる災禍を日本にもたらしました。全国の仲間の支援で同友会は、被災地の生活物資の支援に大きな力を発揮することができました。今、被災地では事業再開に向けた取り組みに着手しつつあります。

 今後、被災地の復興活動には次の2つの理念が据えられるべきだと考えます。 1つは、地域経済の自立的な復興を支援することです。外から支援を受けつつも早急に地元中小企業の事業を再建し、ズタズタになった地域経済の循環の流れを再びつなぎ合わせていくことが急務です。岩手同友会は、復旧業務に関わる県や市町村の発注をすべて被災企業・県内中小企業に行うことを県に提言しています。

 もう1つは、「人間復興」の理念が据えられること。「人間復興」とは、被災した人たちが人としての尊厳を取り戻し、憲法の精神である幸福追求の意欲と希望が湧(わ)いてくる人間中心の復興であり、思いやりのある社会を築くことです。ここでも、中小企業の出番であると言えます。

 問題は、大震災による被害が甚大であっただけに、復興費用も巨額になり、その財源をどのように手当てするかということです。一部では消費税増税など復興税の創設が提言されています。

 仮に復興費用を5兆円として、全額を復興税として家計に課税した場合、「家計の可処分所得が5兆円減少するため、5兆円に限界消費性向をかけた分だけ個人消費が減少することになる。個人消費の減少は企業業績の悪化を通じて設備投資を押し下げる要因ともなるため、復興需要による押し上げを民間需要の減少が相殺する形になり、経済効果はほぼゼロとなるであろう」(みずほ総合研究所「金融市場マンスリー」)。

 ではどうするか。「不要不急の施策を凍結して復興財源に充てる努力をした上で、戦後最悪の自然災害というきわめて特殊な状況下であることを踏まえて、ある程度の国債増発を許容する余地はあるように思われる」(同「金融市場マンスリー」)と提言しています。

 一方、増税も国債増発もしないで財源を確保する意外なアイディアも登場しています。会計検査院官房審議官の飯塚正史氏によれば、2010年度の決算余剰金の約30兆円を2011年度の財源にできるとします。この財源は通常なら、2011年7月に確定し、2012年度予算の財源になるものです。しかし、同氏は3月末で発生する決算余剰金を1年も寝かす必要はないと主張。これまでは、前々年度の余剰金をその年度の財源とする悠長な方式でした。これを同氏は、2011年度をもって前々年度方式を前年度方式に変えれば、サイクルを変えた2011年度だけは、従来の2009年度分と修正後の2010年度分がダブるので、片方が自由に使えるとします(「朝日新聞」4月5日付)。

 一般会計と18の特別会計の決算余剰金は約30兆円。方式の変更には立法が必要ですが、これだけ潤沢な復興予算を確保できるならば早急に検討するべきです。今、国民の英知を結集し、復興と日本経済の再生に総力を挙げるときです。

(U)

「中小企業家しんぶん」 2011年 4月 15日号より