震災後の景況―見通し悪化6割【同友会景況調査(DOR)2011年1~3月期補足調査・中同協】

 中同協・企業環境研究センター(座長:吉田敬一・駒澤大学教授)は、このほど震災発生後の景況に関する補足調査を実施。4~6月期の受注・販売見通しについて、震災前と比べ「悪化」が6割になることなどが明らかになりました。補足調査の概要と吉田教授の談話を紹介します(5月5日号で詳報)。

 中同協・企業環境研究センターでは2011年1~3月期景況調査を回答期間を3月5日~3月15日として調査を開始しましたが、そこに3月11日の東日本大震災が発生し、9割が震災発生前、1割が発生後の回答となりました。震災発生の前後では企業の状況が大きく異なるため、震災発生後の景況を探ることを目的として補足調査(3月28~30日)を実施し、876件(東北地方を除く13同友会)の回答を得ました。

 震災による直接的被害をたずねた項目(複数回答)では、「仕入先が被害を受けた」が34・3%で3分の1の企業が供給問題に直面しています。一方、「販売先が被害を受けた」は16・9%で、売上減少に直結する影響が発生しています。

 震災前と比べた売上高が「減少している」企業は既に34・1%存在します。また4~6月期の受注・販売見通しをたずねた項目では、震災前と比べて「大幅に悪化した」が13・6%、「悪化した」が45・9%あり、ほぼ6割の企業が見通し悪化に見舞われています(図)。

 見通し悪化の原因をたずねた項目(複数回答)では、「仕入先が被災地にある」が49・2%、「流通経路が絶たれた」が31・6%などとなっています。詳細は4月30日発行の『DOR95号』をご覧下さい。

図 4~6月期の受注・販売見通し―同友会景況調査(DOR)2011年1~3月期補足調査より

【補足調査で談話】求められる異常事態への対応力

吉田氏

中同協・企業環境研究センター座長
駒澤大学経済学部教授 吉田 敬一

 調査対象は被災地域以外の立地企業が中心であったため、「特に被害はなかった」が半数強を占めました。しかし、仕入先については3分の1が被災しており、需要があっても材料・製品調達面がネックとなり景況悪化に繋がりかねません。販売先被災も17%を数え、震災の直接的打撃を受けていない企業も事業活動で川上・川下からの影響が今後出てくることが予想されます。日本経済の中枢である関東地域では電力不足による計画停電による業務停滞が全国に波及しましたが、電力供給の行方次第では今後の予断を許しません。また規模が大きい企業ほど売上減少の割合は高く、受発注関係が広域的であるほど震災のダメージを大きく受けています。

 震災前に想定した4~6月期の受注・販売見通しに比べ、震災後にその見通しがどう変わったかについては、悪化の割合が全体で6割に達しました。自動車・電機産業では組立工場の稼働が徐々に進み始めていますが、協力工場・下請企業への波及効果にはタイムラグがあるため、当面の資金繰り・キャッシュフロー問題への対応が求められます。

 なお、復興需要を期待する傾向は建設業と製造業で高くなっていますが、素材・原材料・部品の生産・流通基盤の復旧が遅れる場合、復興需要が輸入によって代替され、地域経済再生に繋がりにくい状況の発生が懸念されます。

 今後の企業経営では、平常事態を前提とした効率性重視のJIT(ジャスト・イン・タイム)から、異常事態への対応力(JIC:ジャスト・イン・ケース)向上が求められます。

 また、大震災復興に関しては、地産地消型の地場産業・中小企業が雇用や生活必需品の生産・流通に果たす役割の大きさから、中小企業憲章の精神に則った経済政策により、持続可能な経済システムと、中小企業振興基本条例による地域内経済循環を重視した多極分散型の国づくりに向けた同友会運動の前進が期待されます。

東日本大震災の義援金のご協力ありがとうございます。引き続きのご支援をお願いします。

中同協義援金口座に振り込まれた金額は、4月15日現在、2億1530万1087円になりました。これまでに岩手・宮城・福島の3同友会に各5000万円を送っています。今後は状況を見て送金予定です。

「中小企業家しんぶん」 2011年 4月 25日号より