【同友会景況調査(DOR)概要(2011年1~3月期)】中小企業、震災・原発事故による供給ネック不況へ突入

 2011年1~3月期の中同協景況調査結果をまとめた「同友会景況調査報告(DOR)」95号が発行されました。今回の調査回答は9割が震災前であったこともあり、緊急に補足調査も実施(13道府県・876件が回答)。その結果も紹介されています。

〈調査要項〉

調査時点 2011年3月5~15日
調査対象 2,458社 
回答企業 1,006社(回答率40.9%)(建設165社、製造業339社、流通・商業299社、サービス業192社)
平均従業員数 (1)38.0人(役員含む・正規従業員)(2)30.2人(臨時・パート・アルバイト)
※業況判断DI(デフュージョン・インデックス)は、好転企業が悪化企業を上回っている割合(%)をさす。DIが100に近いほど、好転企業の割合が高いことを意味し、DIが-100に近いほど、悪化企業の割合が高いことを意味している。好転、悪化が同数の場合は、DIは0となる。ほかの指標のDIも同じ考え方で作成されている。各水準DI以外、本文中特に断りがないものは前年同期比。

駆け込み反動減により景況悪化

 リーマン・ショック後、2009年春から回復期にあった景況は、エコカー減税・エコ家電補助の駆け込み需要の反動減も手伝って、反転悪化する形となりました。

 DORの1~3月期の業況判断DI(「好転」-「悪化」割合)は2010年10~12月期に比べ6ポイント悪化して△3と再び水面下に潜りました(図1)。業況水準DI(「良い」-「悪い」割合)も△12→△19と悪化しました。

 業種別では建設業(△10→△11)、製造業(10→4)、流通・商業(1→△5)、サービス業(7→△5)と、製造業が唯一プラス値ですが、その製造業を含めて全業種総悪化の状況です。また規模別では、50人以上100人未満が10→11と1ポイント改善した以外はすべて悪化しました。100人以上が4→1、20人以上50人未満が6→△2、20人未満が△1→△9と、50人未満での悪化が目立ちます。

経常利益も再び水面下へ

 2010年10~12月期まで6期連続で改善してきた売上高DI(「増加」-「減少」割合)は2011年1~3月期は4→1と悪化に反転しました。建設業が△14→△10と唯一改善した以外は、製造業10→5、流通・商業3→2、サービス業9→△2と悪化しました。サービス業では11ポイントもの悪化です。

 2010年10~12月期に5年ぶりに水面を超えてプラスに転じた経常利益DI(「増加」-「減少」割合)は1→△6と再び水面下に潜りました(図2)。建設業が△18→△14と改善しましたが、製造業9→△5で14ポイント、サービス業6→△9で15ポイントと大きく悪化しました。流通・商業は△1→△1で変化なしでした。

仕入単価が急上昇、売上・客単価との差が拡大

 資金繰りDI(「余裕」-「窮屈」割合)は2010年10~12月期から3ポイント「窮屈」超過幅が拡大して△6となりました。
 借入難度DI(「困難」-「容易」割合)は長期(△19→△21)・短期資金(△21→△24)ともわずかに「容易」超過割合が拡大しました。
 売上・客単価DI(「上昇」-「下降」割合)は依然として深い水面下にありつつも△25→△19と5期連続で改善しています。

 一方、仕入単価DI(「上昇」-「下降」割合)は10→22と急上昇したため、売上・客単価DI△19との差が41ポイントとなり、前回より6ポイント拡大しました(図3)。その上、今回の大震災によって原材料の入手難やコスト上昇が予想され、仕入れ環境のさらなる悪化が懸念されます。

雇用面は改善、人手は3年ぶりに不足側へ

 1人当たり売上高DI(「増加」-「減少」割合)及び1人当たり付加価値DI(「増加」-「減少」割合)はそれぞれ2→△3、△1→△7と悪化しました。1人当たり売上高DIではサービス業で8→△9と大きく悪化、1人当たり付加価値DIでは製造業6→△5、サービス業1→△9と大きく悪化しました。これまで回復をけん引してきた製造業から力強さが失われつつあることが懸念されます。

 雇用面では改善が進み、正規従業員数DI(「増加」-「減少」割合)は1→2、臨時・パート・アルバイト数DIは1→3とわずかながら水面上で改善を見せました。

 所定外労働時間DI(「増加」-「減少」割合)は、2→1とプラス側に留まりました。人手の過不足感DI(「過剰」-「不足」割合)は0→5と2008年1~3月期調査以来3年ぶりに不足側に転じました。

設備投資は30%台を下回る

 2011年1~3月期の設備投資の実施割合は、29.6%→26.1%と下降しました。次期計画割合は31.3%と30%台回復が予測されていますが、震災復興・原発災害の進展次第では計画が先にずれ込むことになりそうです。

 設備の過不足感DI(「過剰」―「不足」割合)は、△5→△8と設備不足感が進行しました。しかし「やや不足」が圧倒的であり、実際の設備投資実施や計画としては顕在化していません。

収益性確保の努力が続く

 経営上の問題点では「仕入単価の上昇」が10.7%→22.5%へと一気に倍水準に増加したことが注目されます。経営上の力点では「新規受注(顧客)の確保」「付加価値の増大」が引き続き2大項目であり、収益性確保の努力が懸命に展開されています。

震災発生後の緊急調査を実施~震災前と比べて次期見通し悪化が6割

 今回の調査回答は、9割が震災前であり、震災後の回答は1割にとどまりました。震災の前と後とでは企業の状態に大きな変化が生じるため、緊急に補足調査を実施し、13道府県(北海道、千葉県、富山県、福井県、山梨県、愛知県、京都府、奈良県、広島県、香川県、佐賀県、大分県、宮崎県)の同友会から 876件の回答を得ました。

 西日本の回答が多いため、直接的被害では「特に被害はなかった」が56.5%を占めましたが、仕入先の被災が34.2%、販売先被災も16.9%を数え、今後、全国的に影響が出ることが予想されます(図4)

 震災前と比べた震災後の売上状況では、すでに34.1%の企業が減少を示しています。業種別では製造業で39.4%、流通・商業で43.6%と割合が高くなっています。規模階層別では100人以上規模で52.8%に達し、規模が大きいほど減少企業の割合が高くなっています。

 4~6月期の受注・販売見通しについては、59.5%が震災前よりも「大幅に悪化した」「悪化した」と答えており、中小企業経営への影響は甚大です(図5)。その理由としては、「仕入先が被災地にある」が49.2%、「流通経路が断たれた(被災によって)」が31.6%、「顧客が被災地にある」が 28.6%と供給ネック不況の様相です。

「中小企業家しんぶん」 2011年 5月 5日号より