経営者同士の応答関係の中で経営指針の確立を【香川】

【変革と挑戦】10

 各同友会の実践事例を紹介する「変革と挑戦」シリーズ。今回は、香川同友会の経営指針づくりの取り組みを紹介します。

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 香川同友会では長年、セミナー形式での「経営指針の成文化」の事業をしてきましたが、「成文化」はできてもなかなか運動として定着するまでには至りませんでした。

 その主な原因は、(1)セミナーの講師と受講生との応答関係に終始すること。(2)提示されたシートに、その時点での自分の考えを記述することが主眼となること。(3)その結果、経営者としての会員同士が「考え方自体の変革」を真正面から問いかけあうことが薄くなることでした。

 2005年、滋賀同友会の「経営指針を創る会」に香川同友会の役員・事務局が参加する機会を得、徹底した会員同士の応答関係の中で経営理念を深めていることに共感。修了後、早速香川で「経営理念を深める会」を立ち上げ、試行的に3回行いました。

 また、すでに経営指針を作成している先輩会員に協力をお願いし、助言者養成講座を3回開催し、理念を深めるための議論の方法や、同友会理念や「労使見解」に対する共通理解・ベクトル合わせを行いました。

 2006年4月、受講生13名、助言者12名の総勢25名で香川同友会の「第1期経営指針を創る会」を開催。「互いに違う立場の仲間同士が信頼し、本音で語り合うことにより、自社が持つべき真の理念を確立」することなどをめざし、約半年にわたって学び合いました。

 その後、現在まで6期にわたり105名の修了生を輩出。修了生からは「経営に対する覚悟ができた」「外部の方や銀行に対して自信をもって自社のことを語れるようになった」などの感想が聞かれています。

 また、現在では修了生のほとんどが、各支部の役員を務め、同友会運動をリードする役割を担っています。

 そのことにより、全県的に「学び」を中心としたレベルの高い例会づくりが行われるようになりました。以前にあった「経営指針は必要か?」といった討議は無くなり、「経営指針はあって当然! いかに実践するか」といった討議がなされるような段階に発展してきました。

 現在の課題として、最近の受講生を分析すると後継者の方が多いため、「何のために経営しているのか」を深める前に、「本当に会社を継ぐ気があるのか? この仕事が好きなのか?」といった後継者としての覚悟を決める討議が主になってしまっているということがあります。

 その結果、成文化してもすぐに社内発表・実践することが難しく、机の中で眠らせてしまう修了生が多くいることも事実です。

 そこで今期は、助言者として参加する修了生も成長できるような「創る会」とするための内容の工夫や、成文化後に受講生が実践に向けた方針・計画の立案ができるようにするための「マネージメント講座」の開催も予定しています。

「中小企業家しんぶん」 2011年 5月 5日号より