発見した課題を具体的な改善・実践に―関西金属工業(株) 代表取締役 美馬 徹氏(大阪)

【変革への第1歩~活用しよう企業変革支援プログラム】14

 企業変革支援プログラム・ステップ1の活用事例を紹介する本シリーズ。今回は関西金属工業(株)(美馬徹代表取締役、大阪同友会会員)の取り組みを紹介します。

美馬氏

 わが社では2009年11月に、全社で「企業変革支援プログラムステップ1」(以下ステップ1)による診断を行いました。私の診断では、理念に関する部分は比較的高く、戦略や顧客満足・付加価値に関する部分が低くなっています。 これを社員による診断の平均と比較してみますと、社員の診断結果は思いのほか低いというのが率直な感想です。またカテゴリーによっては大きなギャップが見られます。

 例えば、「労働環境の整備」については、社長が3に対して社員平均は1・7とかなりの開きがありました。こんなにも認識に差があるのかと愕然としました。「新事業の取り組み」に至っては、社長2に対し社員0・8でした。自分としては事業拡大に頑張っているつもりですが、社員からは「ほとんど何もしていない」と思われている訳です。

 逆に、社長よりも社員の方が高いレベルになった部分もあります。例えば「企業の主要数値の把握」「企業の社会的責任の自覚」などです。

 診断の結果、低いレベルの項目が改善すべき点ですが、このように、経営者と社員とで大きなギャップがある部分も重要で、その原因を分析することが、自社の経営課題を発見する大きなポイントだと思います。そして発見した課題を経営指針に落とし込んで、具体的な改善・実践につなげる、これが「ステップ1」の企業での基本的な活用法だと思います。

 もっと具体的に社内のギャップを調べていきますと、特に製造と営業の間で考え方にかなりの相違があることがわかりました。自社ビジョンではもともと、顧客ニーズに幅広く効率的に対応するために、会社に多くの機能を持たせて部門ごとに分社化することをめざしていました。今回、製造・営業の意識の差を発見したことを受けて、それぞれの部門を独立採算制にし、本格的な分社化へと動き出しました。

 自社の状態や課題を明確に把握し、社内で共有し、さらに変革のための方針や具体策を講じていくことは、今どのような企業においても必要な取り組みだと思います。

 (2010年11月9日に行われた愛知同友会第12回あいち経営フォーラム第1分科会での報告より)

美馬氏は、7月に行われる中同協第43回定時総会の第4分科会で「企業変革支援プログラムステップ2」テスト版について報告します。

「中小企業家しんぶん」 2011年 5月 5日号より