大震災復興の先頭に立つ同友会

復興対策は実態に即した柔軟な運用を

 4月18日に開催された中同協の中小企業憲章・条例推進本部と政策委員会の合同会議では、東日本大震災後の政策対応と復興をめざし、熱い議論が交わされました。

 まず、出席した岩手と宮城から状況を報告。岩手同友会の菊田事務局長は次のように報告しました。

 「岩手同友会は震災3日後から『企業と雇用を守る』を合言葉にがんばってきました。『企業と雇用を守る』と言っているのは現在に至るも同友会だけのようです。被災地の陸前高田市にある気仙支部では陸前高田ドライビングスクールが市役所のような機能を果たしています。会員企業の地域に深く根をおろした人間関係や網の目のような情報網が避難所などの情報を吸い上げ、必要なものを必要なところへ届けることができました。

 『企業と雇用を守る』を強調しているのは、復興期にこそ中小企業が頼られる存在になるはずであり、そのときにしっかり対応できる社員がいることが前提となるので、がんばって雇用を維持することを呼びかけています」。

 また、宮城同友会の佐藤代表理事は、緊急影響調査に基づき、多くの会員が雇用を維持しながら奮闘していることを紹介し、操業再開と復興、地域社会の復興へ貢献するための活動に全力を挙げているとしました。

 さらに、伊東事務局長が会員の状況について報告。 「自分が担当していた気仙沼や南三陸の地域が消えてしまいました。筆舌に尽くしがたいものがあります。これは単なる融資をすれば企業が継続できるというレベルを超えており、操業再開に向けた特別の対応が必要と考えます。結局は、同友会のつながりの中で支え合うしかないかとも考えます。

 しかし、このような極めて厳しい状況の中でも、会員経営者の心は折れていません。家族を失った方も再起を誓っています」。

 このように、被災地の同友会は、復興の先頭に立って奮闘しています。

 しかし、会議では、施策や制度が十分に機能していないことも指摘されました。岩手、宮城、福島の3県の同友会は3月中に各県に対して緊急要望・提言を提出していますが、共通した問題点を指摘しています。

 行政や金融機関の対応の問題として、第1は、制度や施策があっても被災地の窓口・現場での判断が優先され、施策の主旨が生かされていないこと。第 2には、施策や法律自体が間尺に合わず、実態に合った運用がされていないことも目立ちます。例えば、「既往融資の条件変更を申し入れたが、民間銀行は了承しているにもかかわらず、政府系金融機関は謝絶」、「藁(わら)にもすがる思いでつなぎ資金を申し込んだが、にべもなく拒否される」、など。

 政府は、次々と新しい施策や制度を打ち出していますが、現場の窓口が追いついていないのが実情です。

 このような問題を含め中同協は、第1次と第2次の「緊急要望」を各方面に提起してきました。その中の要望事項が実現するなど成果も現れてきています。

 今後、大震災関連の施策の活用を進めていくとともに、実態に合った使い勝手の良いものにしていく必要があります。

(U)

「中小企業家しんぶん」 2011年 5月 15日号より