【特集】第14回女性経営者全国交流会【問題提起】地域の暮らしを支える企業をつくる 中同協幹事長 広浜泰久氏

広浜幹事長

 震災以降、同友会が内外から非常に注目を集めて、「今こそ同友会」だという思いが強くなっています。

何のための経営か

 震災後日本全体が未曾有の国難に見舞われているという中にあって、根源的なところで「われわれは何のために経営をしているんだろう」ということを見直すこともあるかと思います。

 問題提起として2つを挙げます。1つは「生活者の視点でお客さんの思いや動機をどこまでつかんでいますか」という点。もう1つは「社会性・人間性・科学性」すべてをレベルアップするために、「経営指針に基づく経営をちゃんとやっていますか」という点です。

 女性は男性よりも「生活者」として中心にいるという感覚が私にはあります。女性経営者のみなさんは、女性として「自分だったらこういうお店が良いのに」などいろんな角度から生活者の視点がたくさんあると思います。こうした生活者の視点をヒントにして、新しい仕事をつくり、それが地域づくりにつながっていくのだと思います。その「主体者」になるべき方たちが、女性経営者なのだと思うのです。

 現実的にはなかなかうまくいかないこともあります。そこで必要な考え方が、「社会性・人間性・科学性」です。経営指針に基づく経営を実践することで初めて描いた方向に向かっていくと思います。

「自主・民主・連帯の精神」の素晴らしさ

 2つ目として「今こそ同友会」という言葉の元となる「自主・民主・連帯の精神」についてです。今回の震災で大変過酷な状況にあっても、「企業と雇用を守る」「俺たちこそが地域を復興させる」という気概を持って、多くの仲間が奮闘しています。さらに自分だけでなく周りの人を生かす形で巻き込んで、その盛り上がりがどんどん地域に広がっています。その姿を見ていると、「自主・民主・連帯」の真のモデル、普遍性、素晴らしさを改めて感じます。

 「中小企業憲章」にも言えます。「自主・民主・連帯の精神」が本当に色濃くでています。まず「自主」の部分でいうと、基本原則の部分は、明らかに中小企業の自助努力、それを応援するというスタンスです。中小企業に光を当てる、中小企業を尊重しているということです。さらには「中小企業の声を聴く」という「民主」の部分、「政府一体となって」という「連帯」部分。中小企業の素晴らしさを最大限に発揮する流れに向かっています。

 また、昨年APECでWLN(女性リーダーズネットワーク)に参加した中で感じた「普遍性」についてお話しします。女性一人ひとりが一番素晴らしいものを発揮できる会社であり社会にしていかなければいけないし、そういう働きかけをしていきましょうと、女性経営者のみなさんが論議をされていました。これを聞いていて「同友会の中で常に学んでいることと同じだ」と思ったんです。

 われわれが「自主・民主・連帯の精神」にもとづいて考えることが大切だと思います。

皆さんへの期待

 まずは「企業づくり」です。生活者の視点でそれが地域づくりにつながります。豊かさとは何かを考えたときに、1つの側面では「選択肢が多い」ということ。では、その選択肢は誰が用意してくれるのかというと生活者の視点で仕事づくりをしている人であり、その人がどれだけいるかが地域の豊かさになります。ニーズは無限にあるということです。そして経営指針に基づく経営でその成果を確実に出していただくことです。

 2つ目は女性部の活動への期待です。APECのWLNでは、同友会以外は全て女性の団体でした。女性が差別されない社会をどう築くか、高いレベルで論議されていますが、「女性だけで話していてもだめ。男性も含めて論議しなければ」という話がでています。われわれ同友会のポジション、そしてその中における女性部の方々の活動は本当に重要です。女性部の皆さんは、同友会の内外に、様々な提言を積極的に行っていただきたいと思います。

「中小企業家しんぶん」 2011年 7月 5日号より