【経済データを読む】国民の「幸福度」

 OECD(経済協力開発機構)が加盟各国(34カ国)の幸福度を国際比較するための新指標として「より良い暮らし指標(Your Better Life Index)」の中間報告を発表しました(表)。

 それによると、経済面では日本人の家計可処分所得は23,210ドルで、OECD平均22,484ドルを上回り、さらに家計資産は70,033ドルで同平均の約2倍と恵まれています。15~64歳までの労働年齢人口で有給の仕事に就いている日本人は約70%で、OECD平均の65%を超えています。失業率も同平均より低いなど、指標からみると日本人の働く環境は悪くありません。教育面では、日本人の学歴や読解力はOECDで上位に入っています。平均寿命は82.7歳と加盟国(平均約79歳)の中で最も高いものでした。OECDは日本について「多くの幸福指標で平均以上」と評価しましたが、「生活に満足」は40%と平均の59%を下回っています。

 このように日本は、幸福度の指数は高いのに生活満足度は低下する一方です。この原因を最近のデータでみると、3月の完全失業者は295万人と21万人減も、1年以上仕事がない失業者は115万人と5万人増加(岩手・宮城・福島の3県除く統計)。今春卒業の大卒就職率0.7%低下の91.1%、就職希望者0.4%低下の66.4%(大卒で就職したのは約60%という意味にもなります)。2010年の25~29歳の失業率は前年と同じ7.1%と最悪水準で、15~19歳で9.8%、20~24歳で9.1%と2年連続上昇。15~24歳の非正規雇用者の割合は3割を超えています(子ども・若者白書2011年版)。3月末の生活保護受給者は202万2333人と戦後混乱期の1952年度以来59年ぶりに200万人を突破し、前年から15万6000人増など。

 平均値では現れませんが、日本の相対的貧困率が16.0%(2009年)と、米国以上に格差拡大を招いていることから「幸福度」と「生活満足度」の乖離が生じているとうかがえます。

表 OECD「各国の幸福度(より良い暮らし指標)」(10点満点での点数)

「中小企業家しんぶん」 2011年 7月 25日号より