目が離せない最近の新聞記事を追う

緊張高まる世界経済の動向

 東日本大震災から7カ月が過ぎ、物の動きや消費は震災前の状態に戻りつつあるようです。同友会景況調査(DOR)速報(2011年7~9月期)によれば、業況判断DI(「好転」―「悪化」割合、前年同期比)は、4~6月期のマイナス21から12ポイント改善してマイナス9となりました。特に建設業はマイナス17から1と18ポイント改善し、2005年以来の水面上への浮上です。他の指標も同様の傾向で、景況は震災前の水準に達しています。

 もっとも、今後の見通しについての回答は力強さを欠き、回復力は鈍化すると見られます。また、被災地では営業再開の目途が立たない企業も数多くあります。原発事故の影響は福島県を中心に経済活動を阻害しています。大震災・原発事故により日本経済は深く傷ついており、単純な回復はないと考えるべきでしょう。

 新聞の切り抜きというアナログな作業をしていると、断片的な記事と記事がつながってくるという発見があります(以下、日本経済新聞からの引用)。例えば、「小売り、東北に大量出店」の見出しで大手小売り各社が東北地方で新規出店などの重点投資をするという記事(7月18日付)。東北は人口減少が進み、大震災がそれを加速しそうな状況なのになぜだろうと思ってしまいます。記事では、「生活再建の復興消費は持続性があると見て投資を積み増す」と解説します。しかし、「震災後に閉鎖した地元商店の受け皿として大手チェーンが投資を増やしている側面もある」とも指摘。こちらの方が大企業の本音のように思えます。

 しばらく経つと、「小売り、営業最高益相次ぐ」(9月15日付)という記事に遭遇。小売り大手の業績回復が鮮明で、3~8月期の営業利益が過去最高になった企業が相次いでいるとのこと。「東北地方に店舗が多い小売りは復興需要が膨らんだ」。なるほど、記事が見事につながります。この大手の攻勢に対し、会員企業を含む地場の食品スーパー等は熾烈な戦いを展開することになるでしょう。

 最近は世界経済の動きからも目が離せません。「穀物価格が急落」(10月2日付)の記事に目がとまりました。「欧州債務問題や世界景気の減速懸念で投資家のリスク回避傾向も強まり、高騰が一服した金や原油に続いて同じ国際商品の穀物も調整色が鮮明になった」「投資家は換金やリスク回避目的で商品先物の持ち高を減らしている」とのこと。穀物高騰に慣れていた頭を切り換える必要があります。

 投資マネーの引き上げはより深刻な事態につながる可能性も。「世界変調、景気に試練」(10月3日付)では、「欧州の金融市場。銀行のドル調達コストが上昇している。…銀行が手元のドル資金確保のため、新興国で膨らませた投融資を引き揚げる動きが加速。韓国などは通貨安誘導を一転、資金流出を食い止めるための自国通貨買い介入に乗り出した。再び縮み出した信用は、実体経済にも影を落とす」と警鐘を鳴らします。

 世界同時株安の様相を呈し始めた今、「欧州発『第2のリーマン』か」(9月14日付)という見出しにも驚かないほど予断を許さない状況にあります。

(U)

「中小企業家しんぶん」 2011年 10月 15日号より