【特集】2011全国広報・情報化交流会in石川 絆!原点に立ち返り、人の手と心で伝える情報発信

学び、本質を伝え、仲間を増やす

 10月13~14日、2011全国広報・情報化交流会が石川で開催されました。基調パネルディスカッションでのパネリストの発言・問題提起・全体のまとめの要旨を紹介します。

【基調パネルディスカッション(発言要旨)】絆! 東日本大震災からの復興に向けて~同友会としての広報・情報化の役割と意義

情報を共有し、励ましあって

福島同友会事務局主任・郡山事務所長 村上智彦氏

 まず、このたびの全国の皆さまからの大きな支援にお礼を申し上げます。福島県は面積が大変広く、県内でも状況はさまざまです。放射能の問題はいったい何年続くのか、この先どうなるのかわからないという問題を抱えながら、多くの会員は奮闘しています。

 震災直後、福島同友会では会員の安否情報を集中して集めました。それを全会員で共有しようとe.doyuに掲載しました。震災前は約半数の会員しか利用していなかったe.doyuを、緊急対応ということで全会員が使えるようにし、かつ携帯電話にID・パスワードを送信しました。手書きニュースなども発行し、会員とどうつながっていくのかを苦労しながら取り組んできました。

 震災直後から1週間くらいは理事長などの役員が事務局に詰めて、何が大事なのか確認しながら進めました。特に原発が爆発した直後などは大変でしたが、今何が起こっているのかということと、会員の安否に集中して情報を把握し、発信しました。

 3月14日には会員向けに理事長声明、同17日には知事への緊急要望を出し、3月末と4月上旬には民放のラジオ番組に安孫子理事長が出演し、中小企業の状況や考えなどを地域に発信しました。

 地域の基盤が根こそぎなくなるかもしれないという状況に置かれている今、だからこそ「この地域をどうするんだ」とみんなで考えるチャンスでもあると思います。日本では誰もが経験したことのない原発事故の中、日々新しい歴史が生まれています。行政も存立基盤を問われており、一緒に考えられるチャンスだと思います。福島県は「原発に依存しない社会づくり」を盛り込んだ復興ビジョン(素案)を発表しました。地域でがんばる中小企業の存在価値がますます増しています。「長期戦」と覚悟して、今後も会員同士の励ましあいなどを進めていきたいと思います。

双方向のコミュニケーションを大切に

奈良同友会代表理事 (株)奈良ロイヤルホテル代表取締役 八坂豊氏

 奈良同友会では震災翌日の3月12日に理事会があり、義援金など「できることをやろう」と決めました。3月23日には、支援物資の段ボール約1500個分を積み込んだトラックが被災地に向けて出発しました。

 われわれとしては早い対応ができたと思っていますが、それにはe.doyuの情報が非常に役に立ちました。役員・事務局が本気になったのは、被災地の情報がリアルタイムに送られてきたからだと思います。また同友会は頻繁に全国的な交流をしていることも大きかったと思います。

 そして同友会の最大の強みは事務局のネットワークです。事務局が主体的に動いて、それが少しずつ会員に広がっていきました。

 事務局長にこの間の取り組みで感じたことなどをまとめてもらいました。それによると支援物資の呼びかけをした時、「協力します」という声のほかにも「気持ちはあるが忙しい」「公的でない日本海ルートはあてにならない」など、さまざまな反応があったそうです。それでも「同友会の本当の姿を知ってほしい」と発信を続けます。会員への緊急アンケートを行い、緊急アピールも発表します。その結果、3月23日の支援物資トラックの出発式には、否定的な反応だった会員の方も、支援物資を持って応援に駆けつけてくれたのです。事務局長もとてもうれしかったそうです。この経験を通して事務局長は、今後はさらに「双方向のコミュニケーション」を大切にしたいと言っています。

 わが社のある法華寺町には約70事業所がありますが、横のつながりが薄くなっていました。今回の経験に学び地域の結束を強めようと、町内の3人の同友会会員が中心となって呼びかけ、7月に約20名で親睦組織を発足。マスコミなどからも注目されています。

見事に示された中小企業と同友会の存在価値

中同協事務局長 松井清充氏

 震災当日、固定電話も携帯電話も通じない中、被災地も含めて全国各地からメールやe.doyuで情報が届きました。中同協ではそれを集約してe.doyuなどで全国発信しました。3月13日には東日本大震災復興対策本部を立ち上げ、義援金と支援物資の取り組みなどを確認し全国に発信。同17日には仙台、18日には陸前高田に支援物資が届けられました。現地では、会員とその社員が手分けをして、網の目のように支援物資が地域の人たちに届けられました。

 3月14日には直接被災をしていない同友会での大震災の経営への緊急影響調査のサンプルを発信。4月までに21同友会が同じ内容でアンケート調査を行い、日本中に影響が広がっていることを対外的にも広報することができました。

 広報活動では、e.doyu以外にも「中小企業家しんぶん」やホームページ「DoyuNet」などに随時被災地の状況や支援の取り組みなどを掲載しました。対外的にも新聞記者などがホームページを見て取材に来るなど注目を集めました。

 3月23日には第1次緊急要望を国などに行い、20項目中14項目が何らかの形で政策に反映されるなどの成果を生んでいます。

 東日本大震災という大変な状況の中、全国のネットワークができ、いち早く被災地の支援に立ちあがることができたのは、情報をスピーディに共有できる仕組みがあったこと、それを支えるベースとして同友会理念が共有されていたこと、全国行事で知りあい、学びあう中で「顔の見える」信頼関係が培われていたことなどがあったからです。

 震災直後、被災地で開いている店舗は同友会会員の店でした。中小企業と同友会の存在価値が見事に示されました。これからも理念をもった企業を地域に多くつくっていくということを発信していきたいと思います。

「中小企業家しんぶん」 2011年 11月 15日号より