震災不況の「第2波」に備えよう

被災地の「震災特需」とその後の反動を見据える

 東日本震災の大津波では、第1波よりも第2波の津波の衝撃が強く、すべてを破壊し、さらっていきました。被災地の同友会役員との懇談では、「それ(津波の第2波)を経済状況に当てはめると、今の状況はまだ第1波目だ。2~3年以内に『第2波』がやってくる。その時に耐えられ、仲間と負けずにやっていける力をつくっていきたい。同友会の中で腹を割って話せる関係をつくっていきたい」(本紙12月5日付)という発言が強く印象に残りました。

 今、復興のために全国から被災地に人が集まっており、ホテルを確保するのが難しいほど「活況」を呈しています。建設業関連の会員からは平時の倍以上の仕事量になっているとの話を聞きました。一方、口ぐちに「浮足立たないで、足元の経営をしっかりさせないと大変なことになる」とも語ります。今は活況でも、この先の「第2波」に備えなければ、その先はないという危機への認識を深めているのです。

 そのことを裏付ける予測データがあります。「被災地域における雇用創出と産業振興について」(中小企業基盤整備機構、2011年11月)では、宮城県石巻市を題材に震災と復興プロセスでの影響・効果の産業連関分析をしています。

 この調査レポートによると、石巻市では、震災によって3万4000人の雇用が失われる可能性があるが、被災後の復旧の建設需要により、喪失した雇用の約9割、3万人分の雇用が創出されるとします。しかし、その雇用創出は建設業に非常に偏ったものとなります。

 また、復興が本格化する2011年から2013年の3年間は、最大2兆円規模の建設投資が発生し、建設業では市内就労者数の7・5倍から10倍の大規模な雇用が生ずるが、大半は市外の就業者に享受されるようになるとしています。小売・サービス業では、市内就労者数の4割程度に相当する雇用が生み出されるとも。ただし、この効果は長続きせず、2014年から2015年の投資規模は半分以下に縮小し、その後は消滅するとしています。このような急激な投資の拡大と縮小は、地域経済を大きく翻弄するでしょう。

 翻(ひるがえ)って、震災不況の「第2波」は被災地だけの問題でしょうか。数年以内に日本経済全体にも「第2波」は十分に起こり得ます。世界経済は、欧州の財政金融危機、米国の景気の2番底懸念など綱渡り状態にあります。国内でもTPP問題など諸課題が目白押し。

 例えば、消費税増税。消費税率を2013年10月に8%へ、2015年4月に10%へ引き上げた場合、実質GDPを2013年に0・15%引き下げ、14年には1・06%、15年には3・09%も引き下げると推計されています(第一生命経済研究所、『日経ビジネス』2011年12月5日号)。GDPの3%超の引き下げにより、マイナス成長に陥る可能性があります。不況の強烈な「第2波」になるでしょう。

 不況の「第2波」を予見し、危機を乗り越えるための行動と経営の舵取りが求められています。

(U)

「中小企業家しんぶん」 2011年 12月 15日号より