【第25回社員教育活動全国研修・交流会in神奈川】共育が企業を強固なものに~強い絆でビジョンをカタチに~

第25回社員教育活動全国研修・交流会が11月14~15日、神奈川で開催されました。

【基調講演】危機対応力が問われる時代~社員と会社の強い絆をつくるために

中同協社員教育委員会委員長、北海道同友会代表理事
(株)ユタカ商会代表取締役 本郷利武氏

幹部の判断に学ばされて

 まず、「ユネスコ学習権宣言」を紹介します。学習権は人間の生存にとって不可欠な手段であり、一部の幸運な若者たちだけの排他的特権であってはならないということが書いてあります。社内でも読み合わせをしたり、常に見えるところに貼って意識していてほしい内容です。

 私は1981年に入会しました。当社に経営理念はありましたが、朝礼で月2回唱和する程度でした。札幌支部中央西地区例会のグループ討論で「経営理念の『北国の住まいを楽しく!』の『住まい』とは人生観の表現ですね」とグループ長がまとめてくれたことがきっかけで、経営理念を掘り下げる努力をしました。

 経営理念について幹部と共通認識を築くことが大切です。以前こんなことがありました。当社の経営幹部が、取引先から依頼された談合を、独自判断で断りました。理由を聞くと、経営理念に「専門業種としての姿勢を正し」とあるからだと答えました。私は売上が欲しかったなと思いました。しかし、幹部は姿勢を変えることなく、最終的には取引先の理解も得て、正常な取引へ転換することができたのです。私はむやみに売上を欲しがったことを反省しました。

企業は4輪駆動で走る

 業務改善委員長からの「時間を家族にプレゼントする」という提案で、残業ゼロに挑戦しています。また、総務課長から「経費の財源は全社員の共有財産である」という提案で、経費は社員にも公開しています。社員・社員の家族も豊かになることを目指しています。冬の北海道は4輪駆動の車が必要です。この厳しい時代も「同友会、会社、家族、友人」の4輪駆動で走ることが求められます。

 人育てについても同様です。私の会社では幹部との共通認識を持っています。1つは、どこに行っても、どこに出しても通用する社会人に育てること、2つ目に一人ひとりの技術や技能を高めること、3つ目は豊かな人間性を育てようということです。

 都市は地域が見えにくいといわれます。しかし私たちの生活には地域があり、自治体があり、その延長線上に中小企業地域振興基本条例があります。社員に対して「自分たちの生活、地域について考えることをやめずに自分で結論を出そう」と問い続けることが社長の責任といえます。

教育とは“力を引き出す”こと

教育とは“力を引き出す”こと

 同友会の社員教育が目指しているのは、自社に必要な人材を育てることだけではなく、きちんと将来のことを考えて判断できる人を育てることでもあります。同時に「人を生かす経営」の『人』は社員のことだけでなく、社長も含んでいます。

 エデュケーション(education)は教育と翻訳されていますが、語源は「ある力を引き出す」という意味を持つエデュカチオ(educatio)というラテン語です。力を引き出すためには、社長自身も育たなければなりません。教え教えられる関係、これが共育ちです。

「中小企業家しんぶん」 2011年 12月 15日号より