【2011年度共同求人活動から】「労使見解」の精神をベースに、「経営指針・共同求人・社員教育」一体の活動を

若い力で企業と地域の復興をすすめよう

 甚大な被害をもたらした東日本大震災や、急激に進行した円高、さらに欧州の財政不安から来る世界経済の不安定さなどの中におかれた今年の日本経済。多くの企業の採用意欲が回復しない中で取り組まれた今年の共同求人活動ですが、各同友会の懸命な努力により、全体としてはほぼ前年なみの参加企業を確保するなど、共同求人活動を維持・発展させるためのさまざまな取り組みが進められました。

求人・就職活動の動向

 2011年10月の有効求人倍率は、0・67倍。全体としては企業の採用意欲は低いまま推移しました。

 来年3月卒業予定者の就職内定状況(10月1日現在)は、58・4%(大学・短大・高等専門学校)となり、1996年の調査開始以来、過去最低水準となった前年を2・4%上回りましたが、学生にとっては依然として厳しい就職戦線が続いています。

 同友会の合同企業説明会の参加企業数は延べ1663社(前年比93%)と減少しましたが、同友会の共同求人サイト「Jobway」の登録企業数は673社(同105%)と前年を上回りました。

 合同企業説明会の参加学生数は2万215名(同104%)と増加、Jobwayの登録学生は延べ6万1471名(同126%)と大幅に増加しました。

各同友会の取り組みの特徴

 各同友会では、共同求人の参加企業を確保するためにさまざまな取り組みが行われました。

 特に東日本大震災で被災した同友会では、「このように厳しい状況のときこそ、若い力で地域の復興を」との強い決意のもと、合同入社式や合同企業説明会が開催されました。被災地での合同企業説明会に参加した企業は、多くが経営指針を実践している企業だったとの指摘もありました。また震災では、地域の雇用を支える中小企業の役割の重要性が改めて明らかになりました。

 共同求人活動を経営指針・社員教育と「三位一体」のものとして位置づけ、活動の連携を強める取り組みも強まっています。いくつかの同友会では、関係する委員会などの合同会議を開催したり、合同での行事の開催などが取り組まれています。

 「学生と中小企業のミスマッチ」が指摘される中、学生に中小企業の魅力や、果たしている役割を伝える活動も各同友会で取り組まれました。

 学校との連携による講座への講師派遣、行政に協力しての学生を対象にしたセミナーの開催、インターンシップへの協力など、さまざまな形で学生などが中小企業に触れる機会を設け、理解を深めてもらう取り組みが進んでいます。

 また、厳しい状況の中ですが、いくつかの同友会で共同求人活動のスタートに向けて準備が始まりました。

 中同協では、7月13日に文部科学省、厚生労働省、経済産業省、7月14日には、全国私立大学就職指導研究会(略称・全就研)の長谷川会長(創価大学事務局次長・キャリアセンター部長)を訪問し、懇談しました。同友会の共同求人活動や共同求人サイト「Jobway」の紹介を行うとともに、学生・若者の就職に関するさまざまな問題について意見交換しました(8月15日号既報)。

学生の就職難、早期化・長期化の解決を

 学生の就職難および就職活動の早期化・長期化が大きな社会的問題となる中、2月と9月に行われた中同協共同求人委員会では、現在の就職問題が生じてきた社会的背景を学ぶとともに、その解決に向けての論議を行いました。それらを踏まえ、以下の4点(要旨)について委員長談話として「中小企業家しんぶん」などに発表しました。

(1)早期化・長期化の根本的解決のために、国が積極的に関わる中で、共通のルールを確立する必要がある。
(2)ⅵ日本経済団体連合会が、選考活動の開始時期を従来通りとする根拠として中小企業への「配慮」をあげることを再考するよう要望する。
(3)経営指針に基づく新たな仕事づくりと新卒採用・社員教育が一体となった取り組みが、強靭な体質の企業づくりへとつながるとともに、就職難の解決、日本の再生・復興へとつながる。多くの会員企業が、そのような「企業づくり」と新卒採用・共同求人活動に積極的に参加していただきたい。
(4)学生と中小企業の「ミスマッチの解消」のため、多くの方に中小企業に接していただき、本当の姿を理解していただきたい。

 右記の(1)および(2)については、10月17日にⅵ日本経済団体連合会と懇談し、申し入れを行いました(11月25日号既報)。

活動の意義を再確認した全国共同求人交流会

 12月8~9日には、宮城同友会の設営により、「若者と共に魅力ある企業づくりで地域の復興を!」をメインテーマに2011全国共同求人交流会が開催されました(1面参照)。

 交流会では、(1)「労使見解」の精神の基盤は「人間尊重」の精神であり、(2)その「労使見解」の精神に基づいて、経営指針・共同求人・社員教育を一体となって取り組むことが必要なこと、(3)産学官などが一体となり、地域で若者を育てる取り組みが重要であることなどを学び合い、大きな感動が広がるとともに、共同求人活動を広げていく意義を改めて確認する機会となりました。

 昨年6月には中小企業の役割の重要性を謳(うた)った中小企業憲章が閣議決定され、今回の東日本大震災でも、中小企業が地域の暮らしを守っていることが多くの場面で実証されました。しかし、その理解は、まだ一部にとどまっています。

 今後も(1)新卒採用に継続的に取り組むことで「自社の棚卸」を行い、たゆまない企業革新を続けていくこと、(2)共同求人活動を行政・学校などとの連携のもとに「若者を育て、地域をつくる」運動として広げていくこと、(3)中小企業憲章を地域に広めるとともに、憲章で掲げる中小企業の位置づけにふさわしく、中小企業政策を抜本的に強化していくことが重要となっています。

「中小企業家しんぶん」 2011年 12月 25日号より