“ものづくりの好きな仲間を支援したい” (株)オリジナルマインド 社長 中村 一氏(長野)

【若者が輝く企業づくり】2 20歳代の若い世代が中心となった全員参加経営

(株)オリジナルマインド(中村一社長、長野同友会会員)は長野県岡谷市で1997年に誕生し、中村社長は42歳、社員のほとんどが20歳代で、若者が中心となって運営する会社です。新連載「若者が輝く企業づくり」の第2回は同社を紹介します。

若い世代の“ものづくり文化”のシンボル

(株)オリジナルマインドは卓上CNCフライス組立キット(KitMillシリーズ)をはじめとしたオリジナル製品の製造・販売と、約2万点にのぼる新品・中古の電気電子部品、機械部品などのインターネット販売を手掛けています。

CNCフライスは精密加工用機械で事業用であれば数百万円する非常に高価なものですが、同社の製品は購入者自らが組立てる仕様となっており10万円~30万円台と低価格です。また同社のホームページでは電子機械部品を手軽な価格で購入できることから、ものづくりに関心をもつ若い世代を中心に注目を集めています。同社が主催する自作の電子工作品の技術とユニークさを競う「ものづくり文化展」や、「ロボット大会」は若い世代の“ものづくり文化”を表象する存在となっています。

競争力あるオリジナル製品と「メカトロニクス中古品」販売

中村氏は1969年に下諏訪町に生まれ、地元の岡谷工業高校の機械科を卒業した後、プレス金型加工会社に入社し、加工、電気、ソフトウェアなどに関わる知識と技術を蓄積しました。

オリジナル製品を世に放ちたいという思いから1997年に27歳で現在の会社を起業しました。当初はソフトウェア開発で生計を立てましたが、あるとき近所の工場で使われなくなり山と積まれた電気・機械部品に出合い「宝の山だ」と直感しました。

引きとってインターネット販売したところ予想をうわまわる反響があり、以来、「メカトロニクス中古品」のインターネット販売を事業の1つの柱として育ててきました。同時に、2003年を皮切りに卓上CNCフライス組立キット(KitMillシリーズ)を次々と発表して業界での存在感を高めてきました。

初の社員採用と経営者としての苦悩

2004年、「メカトロニクス中古品」の事業が拡大して1人では対応しきれなくなり、初めて社員を採用。翌年、翌々年にも採用して会社が集団となってきました。それまではひとりで思い描いた道をまい進していた中村氏にとって、社員採用は大きな環境変化となりました。

「いよいよ新しい企画・開発に専念できる」と意気込みましたが、“ものづくり”に対する熱い思いはなかなか伝わりませんでした。仕事の指示を朝から晩まで出し、毎月の給与支払いのために売上を気にする日々、1人だけでやっていた時よりも大きな苦労を感じました。

「何のために経営するのか明らかにすることが大切だ」と中村氏は問い詰め、考えたことを経営理念として形にしてゆきました。同じ時期に中小企業家同友会に入会。中同協が発行する書籍『21世紀型企業づくりの決め手~経営指針作成の手引き』などを参考にしながら経営指針を成文化しました。こうして「ものづくりの夢と楽しさを提供して人の役に立ちたい」という会社の原点、社員が人の役に立つことの幸せを実感できる会社をつくるという方向性を鮮明にすることができました。

社員同士の議論を尊重することが大切

2005年頃、同社のオリジナル製品や中古品販売が有名になるにつれて経営理念に共感した若者が遠く離れた他県から入社を志望してやってくるようになりました。“ものづくり”への思いを共有できる社員の入社は中村氏にとって大きな喜びでした。

彼らは知識や技術を貪欲に吸収し、それまで中村氏が担っていた企画・開発も担当するなど力をつけてきましたが、中村氏が業務の指示を出す状況は続いていました。この時期は「社員に笑顔が見られなかった。どうしたらみんなで心を1つにできるんだろうと悩んだ」と中村氏はいいます。

転機となったのが2010年に同社で初めて開催した展示即売会。社員の議論を尊重する形で全ての企画・運営を社員に任せました。その結果、社員同士の生き生きとした連携と自発性の発揮により、展示即売会は大成功。これを機に社員同士の連帯感が強まり、会社内にも笑顔が増えていきました。「自分が全てに口を出すのではなく、社員の議論を尊重してきちんと任せることが大切だった」と中村氏は振り返ります。

20代の若者が中心となった全員参加経営

現在、同社の企画・開発や製造・販売を含めて業務全般を20代の社員たちが担っており「私がいなくても会社組織として機能します」と中村氏は話します。

その背景には、社員全員が参加する組織運営があります。財務情報など重要な経営情報の公開をベースに、各部署のリーダーが中心となって部署ごとに3カ月間の経営計画を立案して評価、一人ひとりが自身の成長目標を掲げて取り組んでいます。

日常的な議論や交流も盛んです。毎週行われる全員参加の会議ではグループ討論を行っており、同社のグループウェア(インターネット上の情報共有システム)では情報交流が活発で、セミナー参加や読書を通して得た新たな知識の交流が習慣化しています。こうした取り組みの積み重ねによって、社員一人ひとりが主体的に経営に参加する状況ができてきました。中村氏の「ものづくりの夢と楽しさを提供したい」という原点は、若い仲間たちの夢と一体となって進行中です。

会社概要

設立 1997年4月1日
資本金 1,000万円
社員数 15名(役員・パート含む)
事業内容 メカトロニクス関連の組み立てキットの開発と販売・新品および中古のメカトロニクス機器の販売
所在地 長野県岡谷市山下町1-1-9
URL http://www.originalmind.co.jp/

「中小企業家しんぶん」 2012年 4月 15日号より