楠1000年、更に今年の若葉なり

~最新の景況調査(DOR)にみる会員の挑戦

 東日本大震災から1年が経過し、中小企業の景況は着実に改善してきました。

 同友会景況調査(DOR)の2012年1月~3月期の回答結果は、業況判断DI(「好転」マイナス「悪化」割合)は前期のマイナス2から4ポイント改善して2と水面上に出ました。前期の見通しでは、今期はマイナス7に落ちるという悲観的見通しでしたので、よく踏ん張っているといえます。

 しかし、業況水準DI(「良い」マイナス「悪い」割合)では、前期のマイナス7から6ポイント悪化してマイナス13に後退。決して景気を楽観視しているわけではありません。

 では、先行きの不透明感が増す中、同友会会員はどのような覚悟で新たな年度を迎えようとしているのか。DORの記述回答「経営上の力点」の中から紹介したいと思います。

生き残りのカギは人材

 「現在の低迷が今しばらく続くと思われ、この状況の中でどう企業が生き残れるか答えは1つ。

 いかに良い人材を集められるか、現在の社員にどう向上してもらえるかがキーだと思う」(北海道、流通商業)。

 中小企業発展の結論でしょう。

経営指針をしっかり実践

 それでは、どうやって社員と向上していくか。要は経営指針を共有し実践すること。

 「全社員参加1泊2日方針策定会議にて、…方針・行動計画をしっかり論議にまとめた。いつもの年より多くの意見を引き出せたと感じる。この経営指針をしっかり実践して行く事の重要性を全員で確認した」(大阪、製缶板金加工)。

経営理念の共有と見直し

 特に、経営理念に立ち返ることが肝要になっています。

 「できているつもりの経営者になっていた。…もう1度出直すつもりで社員さんと共に、理念経営を1から始める」(沖縄、清掃用品レンタル)。

 「理念の見直しにより今後の企業の存在価値について、社員一同意見の交換。その中で営業強化・付加価値の増大に向けての戦略が明確になり、方向性がしっかりした」(愛知、エクステリア工事)。

顧客の立場で深耕営業

 具体的な事業展開をどうするか。

 「同じ視点で顧客を見るのではなく、顧客の立場で考えて深耕営業することにより、業績が拡大してきた。今後は深耕営業できる人材育成と顧客の要望に応える会社の対応力を更に強化する必要がある」(宮崎、水処理薬品装置)。

同友会企業のコラボで

 会員企業間の連携の記述も散見されます。

 「同友会の仲間(同業)とのノウハウの共有により、どんな仕事で受けられるか、及び顧客満足を上げられる努力を皆でする」(京都、住宅リフォーム)。

 「新商品の開発とそれに伴う県内他業種企業(同友会会員企業)との連携協議に注力した。春には発売まで持って行けるかと思う」(和歌山、清酒製造)。

 以上のように、同友会会員は原点を見据え、新たな挑戦に取り組んでいます。 「『楠(くすのき)1000年、更に今年の若葉なり』を心掛けた」(静岡、製缶)。

 樹齢1000年を超える楠も毎年新芽を出しており、1000年前の花を咲かせているわけではないという意味。

 悠久の時の流れを意識しつつも、常に新鮮を心がけたいものです。

(U)

「中小企業家しんぶん」 2012年 4月 15日号より