【特集】合同入社式・新入社員研修会 【経営者からの期待】これからが人生の本番

(株)ヴィ・クルー 代表取締役 佐藤 全氏(宮城同友会共同求人委員長)

「損して徳とれ」

 私は昔、社会人となるときに両親から言われた言葉が3つあります。1つ目は「何をしてもいいが自分の行動には自分で責任を持て」。2つ目は「人様に迷惑をかけるな」。3つ目は「損して徳とれ」。3つ目の言葉はわが家の家訓で、小さいときからこの言葉を聞いて育ちました。徳とは「五徳」と言われる、仁(人を思いやる心)・義(正義を貫く心)・礼(礼を尽くす心)・知(知恵を磨く心)・信(人を信じる心)の5つの心のことで、自分に都合のいいように言い訳することなく、素直な心で素直に生きる、まっすぐな心でまっすぐに生きる姿勢のことを言っています。これは私の人生観にもなっています。

 これから仕事をしていくにあたって失敗が怖いと思っている人がいるかもしれませんが、「価値ある失敗」というものがあります。自分が主体的に行動して得た結果かどうかが大切です。自分で考えて行動したけれども失敗したら素直に謝ればいい。そして失敗を次に生かせばいい。一生懸命に、そして失敗を恐れずに挑戦してほしいと思います。それは必ず自分の成長という形で返ってくるはずです。

「学校の天才」と「社会の天才」は違う

 学校では天才になれなくとも、社会では自分の考え方や努力次第で誰でも天才になることができます。学歴はみんな違いますが、今日から同じスタート地点に横一線に並びます。この先は自分の努力で未来をどうにでも作ることができます。私の父は中卒ですが、今は一企業の立派な経営者として頑張っており、その姿を私は尊敬しています。皆さんの両親や家族もきっとそうだと思います。ぜひ家族と仕事について話し合ってみてください。

 社会の天才になるにはどうしたらよいでしょうか。お客様に喜んでもらうことをすることです。お客様に喜んでもらうのに学歴や生い立ちは一切関係ありません。わが社の社員に、仕事をしてうれしかったことは何かと聞くと、一番多いのは「お客様から“ありがとう”と言われたとき」という答えです。会社はお客様に喜ばれることを仲間と一緒につくる場所です。仲間は一緒に仕事や人生を豊かにしてくれる人たちです。これから苦しいことにぶつかり、自分だけがつらいのだとふてくされてしまいたくなる場面にいくつも出会うと思いますが、そんなときは先輩につらいと言えばいいのです。同じような体験をしている先輩は一緒に乗り越えてくれるはずです。

復興は皆さんの手にかかっている

 震災直後、地域の人を守るために真っ先に動いたのは中小企業だったと感じてくれた人も多いと思います。私たち中小企業は、どんなに世の中が変わろうとも地域とともに生きていく以外に道がありません。だから被災してもすぐ活動を始めたのです。どんな困難のなかにあっても地域を必ず元気にするという覚悟と使命をもって、私たち中小企業家は仕事をしています。皆さんはそういう会社の一員となったわけです。

 この震災復興に向かう年に入社した皆さんにもまた、仕事を通して自分の力で故郷を復興したいと考えている人が多いのではないでしょうか。復興には長い時間を要するかもしれませんが、この大きな使命をもって、一緒にがんばっていきましょう。

(宮城同友会新入社員合同入社式での記念講演より)

「中小企業家しんぶん」 2012年 4月 15日号より