【同友会景況調査(DOR)2012年1~3月期オプション調査より】東日本大震災から1年時点での経営への影響

改善傾向もなお5社に1社で影響~影響の長期化に警戒が必要

 中同協・企業環境研究センターでは、2012年1~3月期の同友会景況調査(DOR、950社回答、平均正規従業員数36・1人)のオプション項目として、東日本大震災から1年時点での経営への影響について調査しました。その結果がこのほどまとまりました。

影響は収束に向かう

 大震災の影響の有無の設問では、3カ月目時点では半数以上存在した「影響あり」が1年時点では21・6%まで減り、影響は収束してきています(図1)。ただしいまだに約5社に1社で影響が残っていることには注意が必要です。業種別に見ると、流通・商業と製造業で影響が大きく、収束に時間がかかったことが見てとれます(図2)。

売上高は震災前と比べて増加

 大震災直後(1カ月以内)と比べた売上高の増減を見ると、3カ月目の時点では、4割にのぼった売上減少の企業は、1年後の時点では2割を切るまでになりました(図3)。

 売上高増減DI(「増加」―「減少」割合)は9カ月目時点より3ポイント後退して14となりました(図4)。しかし3カ月目時点の△25と比べると39ポイント上昇し、大きく「増加」側に転じています。

 業種別に見ると、製造業が最も高い水準で、建設業とサービス業が続いています。

地域別、規模別では格差

 地域別に見ると、北陸・中部が最も高い水準で、北海道・東北、関東が続きます(図5)。東日本に比べて西日本では売上高の上昇に勢いがありません。東日本の関東と北陸・中部は3カ月目時点から比べて1年目時点は50ポイント以上上昇しており、回復に勢いがあります。

 企業規模別に見ると、50人以上100人未満が最も高い水準で100人以上が続きます(図6)。一方で20人未満と20人以上50人未満は、低迷しています。50人未満では3カ月目時点での影響が大きく上昇に伸びが見られません。

風評被害はなお深刻

 売上が減った場合の原因は「予約・注文が入らない」が最も多く31%となっています(図7)。3カ月目時点で多かった「被災地に間接の取引先があり取引減少、部品や資材等の調達困難」や「被災地に関係なく物資不足」の指摘は大きく減少しています。一方で「風評被害」は3カ月目時点では9%だったものが6カ月目時点で16%と増え、1年時点でも14%となって固定化が見られます。原発事故による長期的な影響の深刻さがうかがえます。また、一時期は収束した「被災地に間接の取引先があり取引減少、債権回収困難増加」が9カ月目時点から9ポイント増えています。震災から1年が経った時点での、倒産や廃業が背景にあると考えられます。記述回答では「震災地復興の為、他地域の公共事業削減」(北海道、土木建築請負業)と被災地以外の公共事業減少を指摘する声や、「節約ムードにより、買換えが減っている」(広島、家電販売)と需要低迷を指摘する声がありました。

保留された需要が回復

 売上が増えた場合の要因は「震災で延期・保留された需要の回復」が55・1%となっています。

 震災から1年を経て、部分的には影響の収束が見られますが、なお5社に1社で影響があることや、今後、被災地での倒産・廃業が拡大する可能性があることに注意が必要です。また福島第1原発の事故は福島をはじめとして全国に影響を与えており、さらに長期に及ぶことが避けられません。引き続き、震災と原発事故による経営への影響には注視が求められています。

「中小企業家しんぶん」 2012年 5月 25日号より