愛知県における条例制定の取り組み 愛知県産業労働部産業労働政策課主幹(広報・企画調整グループ班長) 金田 学

 4月18日に行われた愛知同友会第51回定時総会の第4分科会では「条例元年~愛知県中小企業活性化基本条例を企業家の力に~」のテーマで愛知県での条例制定の取り組みを学びました。分科会報告者を務めた愛知県産業労働部産業労働政策課の金田学主幹に同県での取り組みを寄稿していただきました。

 愛知県では、2011年度から2012年度にかけて、中小企業の振興に係る条例の制定に取り組んでいます。

『憲章ハンドブック』に学び

 私は人事異動により、この4月から条例制定作業の担当者となりました。何から手をつけていいかわからずに、前任者から引き継いだ大量の関係資料を眺めている中で、ひときわ目を引いたのが、中小企業家同友会全国協議会発行の『中小企業憲章・条例推進ハンドブック』でした。前任者の手によりさまざまな色の蛍光ペンで重要個所が色分けされたその冊子は、汚れ具合から何度も手に取られ、読み込まれたであろうことが推察できました。この冊子を読むことから、私の条例に関する勉強が始まりました。

 冊子に記された中小企業家同友会の中小企業憲章制定運動、条例策定推進運動の内容を知るにつれ、条例制定そのものよりも、「なぜ条例を創(つく)るのか」「条例をどう使うのか」について、われわれ自治体や中小企業のみなさん、そして県民のみなさんが理解し、目的意識を共有することが重要であり、そのためには、条例制定過程において、きめ細かい中小企業者との対話や情報発信、意見聴取が不可欠だとわかりました。

中小企業が活躍できる条例を

 愛知県ではこれまで、愛知中小企業家同友会にもご協力いただきながら、有識者や経済団体などの代表による「中小企業活性化懇話会」を3回開催したほか、中小企業者などと直接対話する「車座集会」を7回開催し、延べ84名の方にご参加いただきました。そのほかにも、例年2回、各100社程度を対象に実施している中小・小規模企業訪問の機会や、Webアンケートなどを通じて、積極的に条例に対する意見聴取を行なっています。

 現在は、こうしていただいたさまざまな意見を取りまとめ、条例案の内容に反映させるべく作業中ですが、寄せられた意見の中で、条例に対する期待の声が大きいことに驚くとともに、責任の重さを感じています。

 その期待に応えるために、条例の内容だけでなく、条例制定後も「条例は目的どおりに機能しているか」「実施している中小企業振興施策は効果をあげているか」を中小企業者や県民のみなさんと検証できる仕組みが重要だと考えています。多くの中小企業のみなさんが意欲を持ち、意欲を持った中小企業が十分に活躍できるような条例となるよう事務方としても努力してまいりますので、愛知県での取り組みにご注目ください。

「中小企業家しんぶん」 2012年 5月 25日号より