Ⅰ 経営者の責任 (1)経営理念の成文化と社内の共有

【社員とともにめざす企業像へ変革を~企業変革支援プログラム ステップ2】3

 「企業変革支援プログラムステップ2」の内容を紹介する本シリーズ。今回から「自己分析シート」の各項目ごとに、特徴などを紹介していきます。今回は「Ⅰ.経営者の責任 (1)経営理念の成文化と社内の共有」について紹介します。

理念経営

 「理念経営」は、同友会だけでなく一般的に良く使われるようになりましたが、受け止め方はさまざまです。経営手法の1つと説明される場合もあります。確かに「経営理念」を軸として企業の方針や戦略、組織、行動計画などを組み立てていくシステムという意味では、経営手法とも言えますが、経営理念は企業の活動だけでなく関わる人々の生き様までも大きく左右する力がある事から、単なる小手先の手法とはずいぶん違います。

 一方、経営理念さえあれば理念経営だと思っている経営者、また理念経営をしていると会社は自然と良くなると思っている経営者がいることも事実です。

 企業にとって理念経営が真に効果をもたらすには、「理念経営」と言う表現に惑わされることなく、日々の実践と時代に即応した改善を行うことが大切です。

特徴

 自己分析シートⅠ-(1)では、経営理念の成文化とその共有化について確認をします。企業変革支援プログラム全体を通して言えることですが、この項目の特徴は、経営理念の良し悪しを論じるのではなく、経営理念を成文化し、共有化し、実践し、その成果を検証し改善する仕組みがあるかどうかを確認することにあります。

 経営理念は、企業経営にとって重要な要素ですが、それがいかに優れたものであっても、社員が理解し、理念にそった行動をしなければ、良い結果は得られません。日々の仕事の中で理念を意識するような仕組みや、勉強会などを通じて理念を共有する仕組みが必要です。

共有と全社的実践

 経営理念の共有は、例えば会社のあるべき姿を同じものとして思い浮かべることができるかどうか、また社外の人に説明ができるかどうかでその度合いが確認できます。

 さらに理念を言葉として理解するだけでなく、日常の業務や行動に反映しているかどうかが重要です。理念を共有し、全社的実践へつなげるために、定期的に社内で理念についての勉強会・討議を行うなどの仕組みをつくることとともに、顧客などからの外部評価を受ける仕組みをつくることなどが必要となります。より具体的な行動基準を定めたりすることもありますが、社風として定着した時には経営理念だけでも十分という声も聞かれます。

関西金属工業(株) 代表取締役 美馬 徹(大阪同友会)

「中小企業家しんぶん」 2012年 6月 15日号より