「“ちいさな企業”未来会議」に参加して~(株)山田製作所 代表取締役社長 山田 茂(大阪)

 3月3日から6月16日まで、全国から青年層・女性層の中小・小規模企業経営者、中小企業団体、士業、地域金融機関などの100数名が経済産業省に集まり「“日本の未来”応援会議~小さな企業が日本を変える~」(略称:“ちいさな企業”未来会議)が開かれました。(全国31カ所で、同会議の地方会議も開催)

 議長には、枝野経済産業大臣、岡村日本商工会議所会頭がなり、経産副大臣2名、中小企業庁長官をはじめとする中小企業政策の中枢が勢ぞろいです。初日には、野田総理までが参加するなど、政府の意気込みを感じる大きな会議でした。

なぜ、この会議が開かれることになったのか。今までの中小企業政策は中堅企業を対象にしたものです。中小・小規模企業への考えは、苦しいとき、困ったときをなんとか下支えする(助ける)ことのみに力が注がれていました。しかし、国内需要の減少、新興国の台頭と大企業の海外流出、未曾有の円高や震災など厳しい経営環境の中でも必死に地域の雇用を守り地域経済や社会生活を懸命に支えているのは、まさに中小・小規模企業であると政府が認識し直し反省し、私たち中小・小規模企業に焦点を当てた政策を構築し支援していくための意見を収集するためです。

http://www.chusho.meti.go.jp/miraikaigi/index.htm 詳細は左記URL参照】。

 さて、私は3月3日、勇んで経済産業省に到着しました。会場にはコアメンバー以外にも傍聴者やマスコミを含めると200名以上の熱気が漂っています。テレビ局のカメラも並んでいます。自分のネームプレートがある席に座り開会を待ちます。議長である枝野大臣のあいさつと趣旨説明から始まりました。ここで私が期待したのは、中小企業憲章の紹介です。「中小企業憲章の理念の下このちいさな企業未来会議が開催されることとなった…」という言葉を期待したのです。しかし残念でした。中小企業憲章の説明も無い、膨大な資料の中にあの青色の憲章の冊子さえ挿入もされていなかった…。

 ならば!終始一貫して中小企業憲章の内容や意義そして私の想(おも)いを述べることを決め発言してきました。まず、全国から集まったコアメンバー100名に中小企業憲章の存在と意義を認知してほしいと思ったからです。この「ちいさな企業未来会議」の大きな意味は、経済産業正副大臣、中小企業長官をはじめとする産業政策を担う政府の中枢に対して、中小企業経営者が直接意見し対話したことです。たぶんこの国初めての事でしょう。

 これから大切なことは、実効性と継続性と目的です。収集した2000以上の意見を参考に施策を実行し実効性を確認しなければなりません。そのPDCAサイクルをまわす継続の仕組みが必要です。そして最も大切なのは目的の確認です。今後もこの小さな企業と国・行政の直接対話が継続していくでしょう。そこで交わされる対話は、施策や政策ばかりではなく、「何のために…」を大きな声で議論しあっている光景でなくてはいけません。その「何のために…」はもちろん中小企業憲章です!

 中小企業憲章の推進は、まだスタートもできていないことをこの「ちいさな企業未来会議」に関わって感じました。私たち中小企業家同友会が提唱した中小企業憲章をもっともっと力を込めて推進していかねばなりません。国民に、中小企業経営者にそして行政に! それが運動体であるわれわれの責任だ!と覚悟した体験でした。

「中小企業家しんぶん」 2012年 7月 15日号より