「見えない増税」の負担一段と進む

過去5年間で消費税率2・3%引き上げ相当の負担増!

 6月26日、消費増税関連法案が衆院本会議で可決されました。本紙7月5日号の「中同協会長談話」で指摘したように、中小企業経営と国民生活、日本経済にとって重大な影響が懸念されます。参議院での慎重な審議が求められます。

 今回は政局の動きもからみ、消費税のさまざまな問題点のメディアなどでの検討、吟味が非常に弱いように感じられます。しかも、話題は、消費増税のような見えやすい負担増に気を取られ、「見えない負担増」には鈍感になっていました。

 実はこの間、社会保険料負担の増加は決して少なくありませんでした。2006~2011年度の5年間の勤労者世帯の年間負担増の実額では、年金保険料(3・2万円増)、健康保険料・介護保険料(2・9万円増)、直接税(2・6万円増)など計8・7万円の増加となっています。これは、消費税率の5%引き上げの46%に相当します。つまり、5年間に消費税率が2・3%引き上げられたのと同じくらいの負担増があったことになります(第一生命経済研究所「経済関連レポート」2012年6月12日)。

 たとえば、2004年に決まった厚生年金保険料率の段階的引き上げは、労使折半でそれぞれが毎年0・177%ずつ景気情勢に関係なく負担が増しています。

 この間、2008年にリーマンショックがあり、勤労者の所得水準が劇的に切り下がる事態になっても粛々と負担増は進められました。しかも、直前の2006年と2007年には2段階で所得税・住民税の定率減税が縮小・廃止されるというタイミングと重なり、可処分所得は大きく押し下げられました。また、社会保障負担は、労使で折半される仕組みになっていますので、中小企業経営にとっても重石になっています。

 今後も負担増は「計画通り」進められます。復興増税や給与所得控除の縮小、扶養控除廃止に加え、年金保険料は、2012年の8・383%(労使折半後)から、2017年度には9・15%まで引き上げられます。2人以上勤労者世帯当たりの年金保険料の増加は、毎年8300円ずつ増加し、2017年には2012年に比べ4万1500円増になる見通し。また、健康保険(協会けんぽ)は2012年度5・0%から2015年5・3%、介護保険は2012年度0・775%から2015年度0・850%へ引き上げられる見通しです。

 以上のような直接税・社会保険料の負担増のインパクトは、仮に2015年までに消費税率が5%引き上げられるとするなら、その負担増に対して6割程度に相当します。これだけ「見えない負担増」が続く中で、「見える」消費税増税が加われば、負のインパクトは増幅し、強烈な経済の縮小を招く危険性があります。

税・社会保障負担の有ようをどうするのか。社会全体として、勤労者の賃金上昇をどのように実現していくか。国民全体で考えるべき喫緊の課題です。

(U)

「中小企業家しんぶん」 2012年 7月 15日号より