特集・第15回女性経営者全国交流会in沖縄

日本と地域の再生に女性のちからを!!

見つめます地域を!結びます心を!
~しなやかに、したたかに、美しく~
457名が沖縄で学び交流

 6月21~22日、「日本の地域の再生に女性のちからを!!~見つめます地域を! 結びます心を!~しなやかに、したたかに、美しく~」をテーマに、全国40同友会から457名が参加して、「第15回女性経営者全国交流会」が開かれました。初日の主催者あいさつ、記念講演、全体会の問題提起などを紹介します。なお交流会の詳細は8月下旬に発行予定の報告集をご覧下さい。

【主催者あいさつ】中同協会長 鋤柄 修氏

 沖縄の本土復帰40周年の記念すべき年にここ沖縄の地で開催されることは真に時宜を得たことと喜んでおります。

 さて、中同協が中心となって推進した中小企業憲章も2010年に閣議決定され、今年の6月4日には中小企業憲章推進月間のキックオフ集会として、議員会館で各政党の国会議員も参加して集会を開きました。世の中は既に大きく変わってきています。

 世の中の変化に女性がなくてはならない存在になっています。子育てをしながら女性が働ける環境は、中小企業の方がつくりやすいのです。ワーク・ライフ・バランスという観点で、地域の経済を引っ張っていく経営者が全国で生まれていくことを期待します。

 しっかりと学び合い、各地に戻ったら女性の経営者に声をかけてください。全国の同友会では10%が女性です。現在は4万2000名を超えましたから、1万名の女性会員が中小企業家同友会で活躍する日がもう間近に迫っているのではないでしょうか。新しい時代は女性が中心となって切り拓(ひら)いていく、このような気持ちで2日間学びあいたいと思います。

【記念講演】レキオファーマ(株) 代表取締役社長 奥 キヌ子氏

夢の実現! 付加価値の高い地元産業づくり
~研究期間14年、ついに成し遂げた新医薬品~

痔の治療方法を変える画期的な新薬「ジオン」

 レキオファーマは医薬品の開発を目指して志を同じくする仲間たちと1991年2月に設立したベンチャー企業です。

 わが社が開発したのは病院で使われる医療用医薬品で、「ジオン」という痔の薬です。一般的に薬はシーズ探索を経て開発するものですが、私どもの場合は中国にあった「消痔霊(しょうじれい)」という薬をもとに独自開発を手がけました。今では日本をはじめとする世界一3カ国で特許を取得しています。

 2004年7月に厚生労働省から製造承認を得て、開発を決意してから17年目の2005年3月より販売を開始しました。これまでの痔の治療方法を根本から変える画期的な新薬として認識されています。

 痔の治療において従来は1~2週間の入院と手術が必要であったものが、「ジオン」は患部に注射をするだけで治る優れものです。痛みもなく、高齢者の方にも適用できることから、全国約1700の病院やクリニックで使われています。

沖縄の経済の自立のために

 私はもともと薬の知識があったわけではありません。そんな私が医薬品の開発に関わることになったのは、学生時代の台湾留学が大きく影響しています。留学先の台湾から沖縄を見ると、資源や産業の乏しさを思い知らされ、悔しい思いをしました。

 1960年代の後半はベトナム戦争の時で、沖縄は今よりも基地に依存していた時代でした。基地に依存しない経済の自立のために、このままではいけない、沖縄に何が必要なのかと模索しながら、いつの日か事業を起こし、国内といわず世界へ発することができる物を創(つく)ろうと思うようになりました。

 私が育ったのは、1950年代のウミンチュの漁師の町として知られる糸満です。女性たちは夫や兄弟たちが捕ってきた魚を買い取って各家庭に売り歩き、家庭内でも経済的に自立していました。糸満から現在に名を残す女性が多数輩出されています。少女時代に何度となく諸先輩方の武勇伝を聞いて過ごしたせいか、事業を起こすことは抵抗のないことでした。

仕事が仕事を教えてくれる

 大学卒業後は起業の道を選び、最初に手がけたのは植物の輸入販売です。

 その後、結婚・出産のためにしばらく植物輸入の仕事は休みましたが、農場経営のための資金づくりを模索していました。そのころ友人に連れられて出かけたスナックで、原価が3000円ほどのウイスキーが3~5倍の値段で提供されている、こんなに儲(もう)かる商売があるのかと驚きました。それから資金作りの手段としてクラブ経営を考えるようになり、親戚や友人たちの当惑を押し切ってクラブ経営に踏み出しました。

 飲食店の経営は当初安易に考えていましたが、お客様への対応に四苦八苦しました。それでも不思議なことに店は常に満席の状態でした。

 店の経営にあたって私が心がけたことは、第一に明朗な会計にすること。そして来店されたお客様の話を他言させない、従業員のプライベートの話もしてはいけない、という個人情報保護のはしりのようなことを実践しました。また、お客様に楽しんでいただける工夫を凝らしました。

 仕事は必ずしも専門的な知識がなくても始められます。躊躇(ちゅうちょ)することなく始めて、起こる事柄に前向きに取り組み一生懸命工夫すればクリアできます。仕事が教えてくれるのです。

消痔霊との出会い

 中国の消痔霊を日本で開発することを決めたのは、会社を設立する前の1989年。学生時代の先輩が、中国から痔を手術しないで治す「消痔霊」という薬の話を持ってきました。とても興味を持ち、早速、発明者の史教授を訪問しました。沖縄で事業を起こすには、世界でも十分に競える付加価値の高いものを持たなければいけないという思いが常にあったので、話を聞いた時に「これだ!」と胸が高鳴りました。医薬品という付加価値に加え、外科手術に匹敵する効果がある高い競争力を持つ薬です。さらに小さいので沖縄の流通面のハンディである輸送コストも抑えられます。

 この薬の開発権利について、日本の商社や製薬会社からも打診があったようですが、史教授は私の中国文化や習慣などへの理解と、薬の開発に対する熱い思いを信頼して、日本や世界で開発して販売する権利を私に託してくださいました。

 それから知人の紹介で、日本の大腸肛門科の先生を訪ね、協力を得ることができ、いよいよ開発に取り組むことを決意しました。

 沖縄に持ち帰った消痔霊は沈殿物の発生など製剤としては不安定で、沈殿の原因を模索し究明にあたり、製法の開発に成功しました。しかし、新薬の開発には長い年月と大きな組織力、莫大(ばくだい)な資金がかかることを思い知らされ、開発に着手してほどなく、国内の医薬品メーカーとの共同開発を考えるようになりました。パートナーを見つけるまでかなり苦労しましたが、1995年にやっと吉冨製薬(株)(現在の田辺三菱製薬(株))が名乗りをあげて下さり、ようやく発売に漕(こ)ぎ着けました。

女性がもっと力を発揮できる社会に

 基本的に事業を起こすには男女差や年齢は関係ないと思っていますが、現実としては日本で女性が起業するには、まだ厳しい環境にあります。女性は生まれながらにして子どもを生み育てる事業が神様から与えられているからです。社会のインフラ整備を進め、子育てをサポートするシステムがもっと必要です。

 1人でも多くの女性の皆さんが経済活動や社会活動に参画することで、地域の活性化につながります。この国がより良く豊かになっていくには、どうしても女性が力を発揮しなければなりません。

 みなさまに覚えていただきたい沖縄の諺(ことわざ)があります。「なんくるないさ しわぁすな」。これは、沖縄の先人たちが後輩たちに使う言葉です。人生の難関に立たされている人に、長老たちが「もっと楽に、前向きに仕事をしなさい、当面なすべきことをすれば、良い方向に向かっていくから」と慰めとも激励ともいえる温かさで諭した言葉です。ぜひご自身への励ましにしてください。

【問題提起】中同協女性部連絡会代表 沖縄同友会筆頭代表理事 糸数 久美子 氏

新たな仕事をつくり、企業と地域の経済的基盤をつくるために
~暮らしを守る生活者の視点から発信する女性の力~

 企業経営をする中でもネックになっていると言われる「M字カーブ」の問題。内閣府の試算によると、解消すれば約7兆円の生産性が生まれるそうです。

 しかし、現実には女性の20代後半以降、結婚、出産、子育て、介護、と女性の働く環境は制約されています。そうした意味において、私たち中小企業ならではの「女性の能力の活用」を考える必要があります。

 中小企業家同友会では「労使見解」を掲げています。経営の中に取り入れていくことで、誰もが働きやすい環境をつくり、地域の経済活性化につなげることが大切です。

 また、女性は家族の食と健康、安全を預かっている立場「生活者の視点」を生かした事業をつくり出しています。今後はさらに、子育てや介護などの生活の中から出てくる問題を提起し、政策提言・要望として声を上げていかなければなりません。

 日本でも女性が生き生きと輝く時代になってきています。これからは女性起業家の支援も視野に置き、世界に発信していくことが重要です。

 ワーク・ライフ・バランスを積極的に取り組んでいくためにはどうしたらよいのか。女性や、生活者の視点から見た問題解決策を新たな仕事の創出として目を向けてみる。このような角度から臨むと、私たちや地域にとって必要なこと、自ら行動すべきことが具体的に見えてくるのではないでしょうか。2日間、大いに学びましょう。

「中小企業家しんぶん」 2012年 7月 15日号より