行政が経営計画策定を支援する時代

同友会の存在感を増し地域経済の発展をめざそう

 最近、自治体の中小企業支援で注目される動きがあります。個別企業の経営計画策定を支援する施策です。

 島根県は今年度から4年間の「島根県中小企業支援計画」を策定しましたが、「経営計画策定を推進することを重点課題」と位置づけています。

 その理由として、「昨今の経済の先行きが不透明な中、経営環境の変化に迅速に対応するためには中小企業者自らが経営理念に基づく経営計画を立て、計画と結果の比較分析を行い、次のアクションを講じることが特に求められる。こうしたPDCAサイクルを確立した上で自律的に事業活動を展開することが重要である」と強調しますが、「しかしながら、この取り組みが不十分な企業が多い」と、経営計画策定企業の割合がおおむね2割以下(商工団体アンケート)であることのデータを示し、「環境の変化に対応できず継続的な経営改善が行われていない」現状を分析しています。

 そこで、同県は「めざすべき成果としては、経営理念・ビジョンをもって時代変化や経済状況に対応して自律的に事業活動を行う足腰の強い事業者を確保することをこの計画における重点成果目標として掲げる」とし、2012年度の経営計画新規策定事業者数を300件と定めています。

 このような施策の動向を地元メディアは次のように評価しています。「個別企業の経営理念やビジョンに行政の支援を必要とするのかとの思いも否めない。しかし経営計画を策定するなかで自社の強みや弱点も明らかになるはずであり、売上や利益の目標を導く求心力となるのではないか」「縮小の流れに歯止めをかけなければならない。過度の行政依存を避けつつ自立の道を中小企業に求めたい」(『山陰中央新報』2012年5月29日)。

 以上のように島根県の施策は、地域経済の持続的な発展のために地域の中小企業の自立が必要であり、その実現のためには経営計画策定企業が地域に増えることが重要であるとの認識に至ったことは画期的なことと考えます。私たち同友会の経営指針実践の取り組みの先駆性と有効性が行政サイドからも認識され始めたとも評価できます。

 しかし、具体的な施策となると、経営計画を策定しようという企業に対してアドバイザーを派遣し経営計画立案をサポートすることになるようです。私たちは、経営指針を策定したとしても、簡単にはPDCAサイクルが回らないことを経験してきました。県の施策として、「策定」の数値目標を達成したとしても、成果につながる企業を生み出せるのか。どれだけ地域の力になるのか疑問が残ります。

私たち同友会は、「労使見解」など長年培(つちか)ってきた企業づくりから学びあい、経営者同士の切磋琢磨の中から生み出した魂のこもった経営指針づくりに努力してきました。

 地域に点在する中小企業家が同友会に入会し、経営指針実践の取り組みに参加して相互研鑽を重ねて地域でつながりあい、大きな成果を地域に広げていくことも可能と考えます。同友会の会員を地域に増やし、経営指針実践の運動を通じて元気な中小企業を増やして地域経済の発展をめざしましょう。

(U)

「中小企業家しんぶん」 2012年 8月 15日号より