Ⅰ 経営者の責任 (5)企業の社会的役割と責任の自覚

【社員とともにめざす企業像へ変革を~企業変革支援プログラム ステップ2】7

 中小企業は、雇用を維持し納税を行うことで社会に貢献していますが、持続可能な地域社会を考えるとき、環境保全への貢献や安心・安全を要請する社会の期待に応えることも大切な役割です。CSR(企業の社会的責任)という言葉もよく耳にするようになっています。

 中小企業憲章の行動指針、7「地域及び社会に貢献できるよう体制を整備する」において、中小企業が果たす社会的役割に期待を込め、その支援について触れています。

求められている 2つの視点

 ステップ2のⅠ―5には、法令遵守などの「社会要請への対応」と、組織のノウハウや能力を生かした「社会への貢献」の2つの項目があります。コンプライアンスなどという外国語を持ち出すまでもなく法令など基本ルールを守ることは当然のようですが、“偽”という言葉がその年を象徴する言葉に選ばれ、企業の倫理観に疑問を持たれたことも記憶に新しいところです。運用体制も含めて再度確認してみましょう。

 社会貢献とは、豊かな社会を築くため組織の持つ能力を社会に還元することです。レベルアップ目標の確認において、「同友エコに参加するとともに、エコアクション21等環境マネジメントシステムの取得に挑戦する」ことを挙げていますが、省エネに全社的に取り組むことで、「ムダ、ムリ、ムラ」を無くす意識が高まり、他の業務改善につなげることができたと実践された会員からよくお聞きします。また、社会貢献活動を行うことで、社員のモラールアップになるとの意見もあります。

 変革項目の解説にも記述されていますが、中小企業が行政は基よりNPOや市民団体とも連携して、地域の課題を解決し地域循環型社会づくりを推進していくことは、今後広がっていくと思われます。

経営指針に明示する

 この項目は、「経営者の責任」のカテゴリーに位置づけられています。

 「企業活動を通じ、まわりに集まる人、社員とその家族、株主、顧客、取引先、地域社会などすべてを幸せにすることは経営者の仕事であり、喜び、生きがいでもあります」(中同協発行「経営指針作成の手引き」より)。

 経営者自らが先頭に立って認識を高め、社員を巻き込んで自社の社会性を高めていくことが大切です。ゆえに、レベルアップ目標の確認の項目で、経営指針に地球環境問題や地域振興の方策を明示し実践することを強調しています。

兵庫同友会事務局長 内橋秀明(企業変革支援プログラム検討プロジェクト委員)

「中小企業家しんぶん」 2012年 9月 5日号より