中小企業憲章の認知を広げよう

中小企業を高く位置づけた「日本再生戦略」

 8月の日本経済新聞で2つの気になる記事がありました。1つは、おそらく同紙が初めて中小企業憲章を採り上げたこと。前田裕之編集委員の「ちょっとウンチク」(8月20日付、夕刊)というコラム記事です。

 「中小企業は国家の財産ともいうべき存在。中小企業の声を聞き、どんな問題も中小企業の立場で考え、政策評価につなげる…」(正確には「聞き」ではなく「聴き」)と憲章の文言を紹介し、「『弱者救済』の必要性を訴える一方で、起業や新市場の開拓を重視するなどバランスのとれた内容になっている」と評価しています。

 さらに、「残念ながら、理念を具体的な政策に反映させる仕組みづくりは進んでいない。そもそも『憲章』の存在自体が国民にほとんど認知されていないままに時間が過ぎ、宙に浮いている状態だ」とも述べており、私たちと問題意識を共有しています。もっとも、同紙をはじめとする有力マスメディアが「憲章」をほとんど報道してこなかったことが、「存在自体が国民に認知されていない」ことの一因でもあるのですが。

 もう1つの気になる記事は、最近閣議決定された「日本再生戦略」の「中小企業戦略」に関する次の記事(8月14日付、「消費増税」)。

「素案段階で健康や省エネなど10だった再生戦略の重点分野には、民主党内の要求で『中小企業対策』が加わった。必要なのは成長分野の企業の育成だ。小規模というだけで保護すれば構造改革はかえって遅れる」(正確には「対策」でなく「戦略」)。

 執筆者は、切りの良い10でなく、11の分野になったことがよほど気にくわなかったようです。しかも、加わったのが成長でなく、停滞・低迷と同義の「中小企業」。構造改革のじゃまだてするな、と息巻くしまつ。リーマンショックで大反省を迫られた市場万能主義の「構造改革」信仰は日経新聞では健在のようです。

 「日本再生戦略」は、「日本再生の4大プロジェクトの優先実施」を掲げ、「グリーン」、「ライフ」、「農林漁業」、「担い手としての中小企業」をプロジェクトとして位置づけています。ある会合で、中小企業庁長官は、中小企業分野が4大プロジェクトに位置付けられたことは今までにない画期的なことと高く評価しました。

 私たちは、「中小企業憲章」と同時に閣議決定された「新成長戦略」に中小企業が全く位置づけられていないと批判してきました。 そして、国家戦略の中心に中小企業の発展を位置づけること、施策では中小企業憲章の具体化を訴えてきました。さらに、6月を中小企業憲章推進月間として取り組み、多くの国会議員にも働きかけてきました。

 今回の「日本再生戦略」には、そのような働きかけの効果が多少なりとも反映したと考え、運動の確信にしたいと思います。

 また、先の1つ目の記事のように中小企業憲章が報道・論説に採り上げられることが大事であることも言うまでもありません。

(U)

「中小企業家しんぶん」 2012年 9月 15日号より