人と地域を大切にした展開を~(株)ジャパウイン 水口勉社長(神奈川)に聞く

同友会を母体に生まれた介護会社

 神奈川同友会の活動をきっかけに設立された(株)ジャパウイン(水口勉代表取締役、神奈川同友会会員)は、介護関連の事業を行っています。10数名の同友会会員を中心に出資・設立された同社。設立当初の危機を乗り越え、今、順調に事業を展開しています。

 神奈川同友会の経営指針作成部会(経営指針を作成する連続講座)の卒業生有志が、「高齢者問題研究準備会」を立ち上げて勉強会を始めたのが2003年。2000年に介護保険制度もスタートし、高齢化社会への対応の重要性が一段と強調され始めた頃でした。そのメンバーが中心になって2004年7月に設立したのが(株)ジャパウインです。

 (株)水口(墓石の施工・販売業)を経営する水口氏も出資し、取締役の一員として関わることになります。役員になったのは通信機器販売、建設・不動産、サービス業、製造業などさまざまな業種の経営者。介護事業の経験者はいませんでした。

 社員も雇用し、三浦市にグループホームも建設。しかし事業はうまくいかず、多額の赤字を抱え、2期目には債務超過に陥ってしまいます。社員の定着も悪く、採用・退職を繰り返します。

 水口氏は「今から思えば、私も含めて役員は皆、本業の会社を持ち、いわば“片手間”の経営。うまくいくはずがありませんでした」と当時を振り返ります。

 (株)水口の社員からも「社長、もうやめたらどうですか」と言われますが、「いったん会社をつくったからには責任があるし、社員を路頭に迷わせるわけにはいかない」と腹をくくった水口氏は、3期目から(株)ジャパウインの社長に就任。本腰を入れて経営に関わり、立て直しに取り組み始めます。

「人育て」に徹し V字回復

 「(株)ジャパウイン設立時から経営指針はありましたが、あまり活用されてはいなかった」と反省した水口氏。「改めて同友会で学んだことを実践しました」。

 まず「業績が悪いから」と2年間支払われていなかった賞与を銀行借入をして支給。社員に「一緒になってがんばってほしい」と協力をよびかけます。会社の決算も全てオープンにし、経営指針づくりに社員も参画してもらいながら取り組み、社員教育にも力を注ぎます。

 「介護事業は“究極のサービス業”。人の力が決め手です。私は介護の専門家ではないので、『人育て』に徹するしかなかった。でも、それが良かった」。

 その後、業績はV字回復を遂げ、黒字基調に転換します。「社員ががんばってくれました。でもこの時期は、私も社員も本当に大変でした」。

 現在、同社の役員は水口氏以外には、副社長と監査役の2人で、両名とも神奈川同友会会員。「この2人の役員に加え、会員の顧問税理士にも入ってもらい、毎月1回経営会議を開催しています。同友会で学び合っている仲間なので、考え方にズレはありません」と水口氏。

 会員同士が共同で事業を行う場合は、「『何をやるか』より『何を大事にするか』が重要。当社のスタート時はそれが弱かった。同友会の会員同士ならそれが可能なはず」と分析します。

 今の仕事について「社会性・人間性の大きい仕事であることが魅力。また多くの雇用を生み出せることも、やりがいにつながっている」という水口氏。現在、川崎市・横浜市を中心に事業拠点を6カ所展開していますが、「高齢者の立場にたって、地域を大切にしながら、今後も事業を展開していきたい」と夢は大きく広がっています。

会社概要

設立 2004年7月
資本金 3,500万円
社員数 正社員53名、パート社員70名
事業内容 ケアプラン作成、デイサービス、ホームヘルパー派遣、福祉用具販売・レンタル、グループホーム運営、住宅改修工事など
所在地 神奈川県川崎市川崎区東田町
URL http://www.japawin.jp

「中小企業家しんぶん」 2012年 10月 25日号より