【同友会景況調査(DOR)概要(2012年7~9月期)】中小企業、景気後退のリスク高まる

 2012年7~9月期の中同協景況調査結果をまとめた「同友会景況調査報告(DOR)」101号が発行されました。

調査要項

調査時点 2012年9月5~15日
調査対象 2,368社 回答企業 924社(回答率39.0%)(建設165社、製造業314社、流通・商業271社、サービス業168社)
平均従業員数 (1)36.9人(役員含む・正規従業員)(2)29.2人(臨時・パート・アルバイト)
※業況判断DI(デフュージョン・インデックス)は、好転企業が悪化企業を上回っている割合(%)をさす。DIが100に近いほど、好転企業の割合が高いことを意味し、DIが-100に近いほど、悪化企業の割合が高いことを意味している。好転、悪化が同数の場合は、DIは0となる。ほかの指標のDIも同じ考え方で作成されている。各水準DI以外、本文中特に断りがないものは前年同期比。

各調査が景気停滞をそろって指摘

 欧州債務危機などの先進国の停滞、中国をはじめとした新興国の景気減速、国内でも政局の混乱がつづき、内外ともに多事多難の状況です。日銀短観(企業短期経済観測調査)の業況指数(DI)は大企業、中小企業ともにわずかに悪化、その他の調査でも景気後退が指摘されています(図1)。世界経済の減速は日本経済に下押しリスクとなりつつあります。

 DORの2012年7~9月期の業況判断DI(「好転」-「悪化」割合、前年同期比)は9→7と悪化しました。ただし東日本大震災後の景気回復期であった2011年7~9月期との比較なので、悪化感が大きく出ている可能性があります。そこで前期比の業況水準DI(「良い」-「悪い」割合)に注目すると△8→△10と低下しています。さらに先行きの10~12月期についても、業況判断DI(前年同期比)で2→△6と8ポイント悪化、水面下に戻る見込みで、業況水準DI(前期比)でも△10→△13と3ポイント悪化するとみられています。従って年度下期、中小企業景気は、後退リスク含みです。

製造業が急低下、西日本の悪化が目立つ

 業況判断DIを業種別に見ると、製造業が14→△6で20ポイントも大幅に下落、その一方で建設業は△2→2と4ポイント好転、流通・商業は5→1で4ポイント低下しました(図2)。製造業の急低下が今期の景気後退に大きな影響を与えたことになります。製造業のなかでも鉄鋼・非鉄金属、化学・石油等製品、金属製品、機械器具の製造業4業種の落ち込みが激しく外需減退の影響がうかがえます。

 地域経済圏別では、大都市圏の関東が9→5で4ポイント減、北陸・中部が15→14で1ポイント減、近畿が0→△5で5ポイント減でした。地方圏では北海道・東北が8→1で7ポイント減、中国・四国が15→△4で19ポイント減、九州・沖縄が9→△6で15ポイントの減でした。西日本の悪化が目立ちます。

 企業規模別では、100人以上が27→5で22ポイント、50人以上100人未満が3→1で2ポイント、20人以上50人未満が19→6で13ポイント、20人未満が4→△1で5ポイントと全企業規模において低下しました。特に100人以上の急落が目立ちます。

採算水準はプラス維持、同友会の企業は健闘

 売上高DI(「増加」-「減少」割合)は11→5と6ポイント減退、経常利益DI(「増加」-「減少」割合)は5→0と5ポイント減少、そろって悪化しました。ただし採算水準DI(「黒字」-「赤字」割合)をみると24→26と2ケタのプラス水準で2ポイント上向きです(図3)。これは前年同期比ではなく、現在の到達点を示しており、採算を持ちこたえていることがわかります。同友会企業では不況への耐性が培われつつあるといえます。

 金融面では、資金繰りDI(「余裕」または「やや余裕」-「窮屈」または「やや窮屈」割合)は6→4となり、「余裕」感がやや縮小しました。金融環境に大きな変化は見られないものの、2013年3月末には中小企業金融円滑化法の失効が予定されており、中小企業に対する金融支援は縮小されつつあります。金融支援の「出口」を迎えるにあたり、企業経営の健全化と金融機関とのコミュニケーションの点検・強化が求められます。

 採算のカギを握る売上・客単価DI(「上昇」-「下降」割合)は△15→△15と水面下で低迷しています。一方の仕入単価DI(「上昇」-「下降」割合)は12→9と下降。コスト上昇圧力の緩和が続く下で、売上・客単価の改善を実現できるかどうかが課題になっています。

設備不足感が続くも、実施は「様子見」が大勢

 1人当たり売上高DI(「増加」-「減少」割合)及び1人当たり付加価値DI(「増加」-「減少」割合)は7→0、2→△2とそろって悪化しました。雇用面では、正規従業員数DI(「増加」-「減少」割合)は9→3と減少、臨時・パート・アルバイト数DIは7→7と横ばいでした。人手の不足感DI(「過剰」-「不足」割合)は△5→△7と不足感が継続しています。

 設備の過不足感DI(「過剰」―「不足」割合)は△11→△9と不足感が続いているものの、投資実施割合は前期とほぼ同水準(30%)にとどまりました。設備投資の実施目的は、「能力増強」(35.3%)と「維持補修」(34.4%)が拮抗しており、能力増強に力強く移っていけないもどかしさが表れています。

社員教育で付加価値向上めざす努力が拡大

 経営上の問題点では「同業者相互の価格競争の激化」、「民間需要の停滞」がそれぞれ増加しました(図4)。一方で「従業員の不足」、「熟練技術者の確保難」など人材確保に関わる指摘が増えてきています。

 経営上の力点では「新規受注の確保」(62.2%)、「付加価値の増大」(48%)に「社員教育」(42.3%)が続きます。「社員教育」は2009年同期の35.3%、2010年同期の36.8%、2011年同期の39.1%から着実に増大しており、厳しい企業間競争を打破する戦略として社員能力の向上を土台に据える同友会型企業の意義が活かされています。

経営上の努力(記述回答より抜粋)

■雨季には洪水や災害などのパトロールに長年取り組んで来ております。やはり危険な業務内容と、早期の組織対応が懸案事項だったので、経営理念にそって今期経営計画でBCP(事業継続計画)の制定をあげ、この7月から作成しております。地域のために何ができるか、何をしなければならないかを事前に考える機会となり、社内共有が進んでいます。(建設業、岡山)
■夏の電力消費を抑えるために、サマータイムを導入して電気代の削減をしました。既存の商品の値上げができない状況の中で、新商品を提案、販売することで利益が増えました。今後もこれらを継続して原材料の値上がりにも耐える企業を目指します。(製飴業、埼玉)
■物流の集約化とコストの見直しを実施。管理費用の低減を図る。単価アップできる高付加価値商品の開発力強化。中国への社員の長期研修派遣の実施。(靴卸売業、北海道)
■来期の経営計画作成のために幹部は、1泊2日で研修所にて議論を重ねて最終案をまとめた。世代交替を進めるため若手リーダーの育成に力を入れて行きたい。海外市場(中国・タイ)の調査を始めた。(水処理プラント設計施工メンテナンス、愛知)

「中小企業家しんぶん」 2012年 11月 5日号より