Ⅳ 市場・顧客及び自社の理解と対応状況 (2)苦情対応や顧客との関係強化

【社員とともにめざす企業像へ変革を~企業変革支援プログラム ステップ2】17

 この項目では、具体的なクレーム対応などについての仕組みづくりが取り組まれているかどうかを問いかけています。しかし、この企業変革支援プログラム全体について誤解がないように申し述べておきますが、このプログラムの5つのカテゴリー、全22項目の問いかけは、それぞれの経営機能を分割して評価する物ではありません。1つの経営組織全体を5つの視点から多面的に診断し革新すべき気付きを得ようというものです。従って本項目のクレーム対応についても、自己評価を通して組織全体を考える視点を持ってほしいという点をステップ2では強調しています。

 そのためにも「変革項目の解説」は注目してみてください。クレームはお客様がわれわれの経営に対して表現する最も大きな感情の1つです。顧客の感情を理解せずして、企業の自己変革はありえません。感情という目にみえないものを、仕組み化するというプロセスに何が必要なのか。この項の問いかけに真摯に応えようとする事は、全ての問いかけに通じる企業変革のステップを登ることにもつながっています。

 さて、クレーム対応は企業変革にとって最高のチャンスです。解説にもある通り、クレームとは、苦情ではなくお客様からのご指摘であり、次もわが社を利用したいというお客様からのメッセージです。クレームを訴えたお客様ほど、その後もずっと私たちのお客様でいて下さいます。そうなる為に、わが社が変革することは何よりも楽しくやりがいのあることでしょう。クレームが起こる事が恥ずかしいのではありません。クレームに対応できない事が恥ずかしい事なのです。対策を怠る事が恥なのです。クレームと苦情と事故は違います。クレームの対応を誤ったとき苦情となり、対策を怠ったとき事故へつながるのです。ですから、ささいなクレームにこそ誠実に対応するから学びがあり、感動があります。クレームは最初に対応する人の印象で解決の難易度が変わり、対応を誤れば苦情となり、正しければ信者をつくります。自社の都合ではなく、お客様の都合を優先したとき、クレームから伝説が生まれます。まさに、クレームは企業経営の「宝」です。

 この項を全社的に掘り下げ、クレームを通してお客様のありがたさや組織のあり方にまで社員と共に語り合い、変革を実践すること、それが本プログラムの最も求めていることなのです。

(資)若竹屋酒造場 社長 林田 浩暢(福岡)
中同協企業変革支援プログラム検討プロジェクト委員

「中小企業家しんぶん」 2013年 2月 5日号より