企業づくり・地域づくり・同友会づくりを一体として―中同協幹事長 広浜泰久氏

 1月11~12日に開催された中同協第3回幹事会より、広浜中同協幹事長の問題提起「2012中間総括と2013重点課題」を紹介します。

企業づくり

人を生かす経営
 企業づくりについては、「人を生かす経営」を推進することがあげられます。
 私が考える「人を生かす経営」とは、「1人1人が持っている人間としてのすばらしさを最大限、一番いいかたちで発揮する環境をつくっていくこと」と考えています。東京大学名誉教授の大田堯先生は「人間は1人1人違いがあり、違いを認めて個性として生かしていこう」ということ、「生き物は自ら変わっていく力がある」ということ、そして、「お互いに関わりをもって成長していく」ということを言われています。経営指針・共同求人・社員教育・障害者雇用ではベースとして「人を生かす経営」を考えていく必要があります。
経営指針の成文化と実践運動
 経営指針が成功する条件として、労使見解に基づいた社員との信頼関係がベースにないと場合によっては大失敗する可能性があります。私は経営指針の実践で気をつけていることが3点あります。
経営者の覚悟
 まず1点目に「経営者の覚悟」です。同友会景況調査(DOR)の特別アンケートの経営指針活用状況と業況水準(図1)では、経営指針を作成しても未公表では業況水準は未作成と変化ありません。
 しかし社外に公表して毎月到達点を確認し、会社でPDCAを回すと明らかに業況に成果が見られます。DI値もプラスに転じています。少なくとも経営指針は社内や社外に公開することが必要です。グループ討論の中で経営指針をつくってもきれいごとではないかと思ってなかなか公表できないと聞くことがあります。経営指針はきれいごとでもあります。そこで重要なことは、きれいごとではあっても、それに本気で向かっていくという「経営者の覚悟」を決めることです。

※業況水準DIは、好転企業が悪化企業を上回っている割合(%)をさす。DIがプラスだと好転企業が多く、マイナスだと悪化企業が多い。

経営指針は社員とともに実践
 2点目は、経営指針は社員を巻き込んで実践するということです。最終的には経営指針に基づいて、社員1人1人が自分で計画を策定し、その計画に基づいて毎月、できれば毎週、自分でPDCAのサイクルを回していくことが理想的であると思います。ここまでくると全社一丸の経営であり、経営指針にもとづく経営として一番いい形であると思います。社員1人1人が、経営計画、部門計画、個人の計画にもとづいて、自分がいま何をやらなければならないかが明確であれば、会社が良くならないはずがありません。
継続して実践を
 3点目は、経営指針を継続して実践していくということです。「企業変革支援プログラム」では、データを集計すると経営指針を策定してから1~3年では顕著なデータの変化はありません。しかしながら5~10年の実践では、すべてのカテゴリーに関して明らかに成果が出ていることが分かります。確かに課題はたくさんあります。その課題を解決していくには、短期間ではできません。しかしながら1つ1つ解決していけば、確実に良くなっていくことがわかります。同友会全体では、この経営指針の成文化と実践に取り組んでいる会員企業がどれだけいるかが問われています。

地域づくり

憲章・条例を全会員の運動に
 中小企業振興基本条例制定はこの1年間で大きく広がりを見せました。2013年1月現在、23道府県、85市区町になっています。同友会が直接関係しながら、条例が制定されているケースも増えてきており、今後ますます広がっていくものと考えています。しかしながら、この憲章・条例の運動を考えてみますと、各同友会で温度差がありますし、それぞれ同友会の中でも温度差が見受けられます。一部の人が熱心に憲章・条例運動を進めているという状態を変えていかなればならないと感じています。
 なぜかと言いますと、憲章や条例が制定されてもそれだけでは意味をなしません。地域社会がどれだけ良くなっていくかが課題です。全会員が関わる運動にしていくことが必要です。私自身も千葉同友会の条例運動に取り組むまで、千葉県の施策はまったく知りませんでした。行政の方々はいろいろな施策を実施していますが、その施策の成功事例は行政だけではつくれません。その施策を活用するのは中小企業家です。できるだけ多くの会員が施策を活用し成功事例をつくっていくことが必要です。

同友会づくり

同友会づくり・企業づくり・地域づくりを一体として
 今年度最高会勢を更新する同友会が増えています。特徴を見ますと、支部づくりと条例運動の展開の事例で北海道同友会、企業づくりをお互いに学び合うことの仕組み化で愛知同友会など多数の教訓が出てきています。
 また、全国の組織率、在籍率、入退会率分析からわかったこととして、10年間同友会にいるとほぼ辞めないということが分かってきています。最低5年間は同友会にいてもらう仕組み、5~10年のスパンで、同友会を活用して企業を変革していく同友会づくりと企業づくりを一体として取り組むことが必要かと思います。
 全国同友会の実践事例からたくさんの事例が出てきていますが、今年特徴的なこととして、役員研修の体系的な取り組みや、役員体制・事務局体制の見直し、業務改善などの取り組みがありました。
 次年度の同友会づくりの方針骨子にあるように、同友会運動は、その範囲が広がり、質的にもレベルが上がり、活動自体が増えてきています。いままでどおりの体制ではなかなか進めることが難しくなってきています。そこで求められるのが「ビジョン」「役員・事務局の質と量」「自主的・主体的活動」です。

同友会役員として

同友会理念を体現するモデル役員像
 同友会理念を学んで実践し、成果をだして、そしてフィードバックすることが役員としてのモデルとなることだと思います。同友会理念実践に向けての課題を自分なりに設定し整理し、同友会を通じて実践していくことが重要なことです。また、同友会の中では、同友会理念に照らし合わせて経営体験報告をすることも大切です。
 同友会役員には企業づくり・同友会づくりだけでなく、自分たちが関わることで、地域や国などが変わるなどの醍醐味があります。役員としての醍醐味を最大限享受することが大切で同友会の学びに卒業はありません。
運動を進める組織と、それを担う役員・事務局のあり方
 同友会運動を進める組織、役員、事務局のあり方では、(1)必要とされる機能は?(2)果たすべき役割の分担は?(3)役割を担う役員・事務局の人数と力量は?の3点を各同友会で徹底的に議論していただきたいと思います。機能を明確化して、職務分掌をしていくことです。問題なのは機能を明確化し、組織をつくってもそれを担う力量があるかどうかが問われます。
 それぞれの役割を担う役員と事務局員の人数と力量が課題となります。役員会などで進捗状況を確認しながら進めていくことが必要となります。特に事務局員に求める役割・接し方・育成・物心両面の自己実現についての合意形成が必要です。また、会員の自主的・主体的活動に関して合意形成が必要になってきます。しかし、会員の自主的・主体的活動とはいっても、同友会らしくない方向に行ってしまうという危惧もお聞きします。そのためには、自主的・主体的な活動ができる条件づくりが絶対的に必要です。体系的・継続的な役員研修と情報化などの条件を整えていきましょう。特に役員研修は単発で行うのではなく、体系的に継続的に行うことです。情報化も計画的に取り組んでいく必要があります。
 運動に求められる科学性も必要です。まず財政問題については、お金がないからできないということではなく、理事会の中でどう解決していくかという視点で論議する必要があると思います。次に機会損失の最小化についても検討する必要があり、ぜひ意識していただきたいと思います。「せっかくすばらしい例会だったのに、ゲストが少ないのが残念だったね」ということなどです。同友会財産の最大限の活用もお願いします。経営指針や同友会の書籍など多数あります。十二分に活用されているかと言えばそうでもありません。ぜひ最大限に活用をしていただきたいと思います。

「中小企業家しんぶん」 2013年 2月 15日号より