【社員とともにめざす企業像へ変革を~企業変革支援プログラム ステップ2】19
「敵を知り己を知れば百戦危うからず」と言います。敵は競合企業を含む外部の環境であり、己は自社の人、物、金、技術、情報などの経営資源の状態と経営活動に必要なさまざまな能力のこと。己の能力をいろいろな視点から分析し、自社の経営体質は現在どのような状態なのか見極めることが経営指針作成の前提となります。
一般に、経営体質の分析には、組織機能、マネジメント、社員の意識構造など数量化し難い要素を対象とする定性的分析と、決算書による財務分析や原価資料などを活用して数字で分析する定量分析があります。
これらの分析によって、経営環境の変化に対応させながら自社の「強み」をさらに発揮し「弱み」を克服して、経営戦略を練り上げていく際の拠り所にします。
自社の歴史に学ぶ
分析の有効な方法の1つは「自社の歴史に学ぶ」ことです。自社の体質は、創業してからの会社の営みと蓄積の結果として現在にあらわれたものです。
創業以来の売上や粗利益率、経常利益や社員数といったデータの推移をまとめて、その時々の経営環境に対してどんな手を打ってきたのかを確認してみましょう。「原因のない結果はない」と言います。その時は気がつかなかったことも時が経って冷静に振り返ってみることで、気がつくことは多いものです。自社の経営体質の反映の結果としてとらえることで、強みや弱みをつかむことができます。
創業以来の業績を概観して、5~10年くらいの期間で区分して、その期間を成長期、安定期などの名称をつけると時代背景がイメージしやすくなります。右肩あがりで成長している期間については、どのような要因でそうなったのか、逆に右肩下がりで業績不振の期間はなぜそうなったのか。その時々に考え、手を打った経営戦略・戦術に照らして検証してみましょう。社員の入社・退社の数や定着の状況は、組織の状態を知る手かがりとなります。
社員や同友会仲間の知恵も活用して
そうは言っても、自社のことは、当事者ではなかなか気がつかないこともあります。そんな時は、社員や周囲の声が教えてくれます。「わが社の強みと弱み」というテーマで社内で話し合う場をつくってみましょう。「創業から60年たっていることがわが社の強み」という社員さんの声に、歴史の重みを実感した後継者もいました。
業界では当たり前と思っていたことが、異業種から見ると強みや弱みになっていることは多々あります。本音で語りあう同友会の仲間の存在の本領発揮の時です。
宮崎同友会 事務局長 結城 美佳
中同協企業変革支援プログラム検討ブロジェクト委員
「中小企業家しんぶん」 2013年 3月 5日号より