個人保証見直しの声を高めよう

 約120年ぶりとなる民法の大改正をめざす法制審議会(法務大臣の諮問機関)民法部会の動きが活発化するにつれてマスコミ報道も盛んになり、国民の関心も高まりつつあります。

 民法(債権法)改正の内容と論議の経緯については、本紙2月5日号、2月15日号、3月5日号と3回にわたり連載された弁護士・児玉隆晴氏(東京同友会会員)の「民法改正を考える」に詳述されています。

 同氏は、契約等において「民法の規定を国際取引ルールに近付ける」ことが「強者対強者のルールに変える」ことになり、弁護士会は「情報や交渉力等における弱者が不利益を受けないようにすべき」との意見書を提出してきたことを紹介しています。

 このような働きかけにより、公正、公平な取引の維持が可能な方向へ進みつつあるとしています。

経営者保証の規制必要

 2月26日民法部会が発表した中間試案は、次のような見出しで各紙が報道しました。「個人の連帯保証原則禁止、不当な約款無効」(朝日新聞)。「契約ルール・中小に配慮、個人保証・経営者に限定、約款・法定利率も見直し」(日本経済新聞)。毎日新聞は、試案発表の前から第三者保証による自殺、破産の事例を調査し「個人保証見直し」キャンペーンを組んでいました。

 2月28日東京都中小企業振興公社を会場に開かれた民法改正を考えるシンポジウム「どうなる! 『個人保証』」(中同協主催・日弁連共催)は、まさに時宜をえた企画であったといえましょう(1面に関連記事)。

 中同協は、「国の政策に対する中小企業家の要望・提言」の中で、金融庁の金融機関への「監督指針」で位置付けられている「経営者以外の第三者の個人連帯保証を求めないことを原則とする融資慣行の確立」、「保証履行時における保証人の履行能力等を踏まえた対応の促進」をすべての金融機関に徹底することを要望してきました。

 個人保証の原則禁止を強く主張してきた東京同友会は、経営者保証を全面禁止すると、現状では貸し付けが円滑に行なわれなくなる懸念もあることから、経営者保証については次の規制をすべきと提起しています。

(1)経営者の資力に比例した限度でしか保証人は責任を負わない原則(比例原則)の採用。
(2)保証債務について、裁判所の判断による減免を認める制度の導入。
(3)「停止条件付き個人保証」(連帯保証債務の発生を一定の制限条項違反の場合に限定する)に限ること。

このような現場経営者の声をさらに高めていく必要があります。

貸し手と借り手は対等

 民法改正をめぐっては、「改正不要」の意見もあります。特に「個人保証」は中小企業が金融機関から融資を受けるさいに長年にわたって「定着」してきた慣行であり、「禁止」は融資を難しくし、経済活動を弱めるとの声です。

 しかし、私たちは「貸し手と借り手は対等」との考えに立って金融環境の改善運動を進めてきました。経営指針を確立し、強じんな体質の企業づくをめざすことは、金融機関との信頼関係を確立する上でも重要な条件づくりとなります。

 あらためて、自社の金融環境を再点検し、民法改正を時代の追い風として自立型企業づくりの前進をはかりましょう。

(K)

「中小企業家しんぶん」 2013年 3月 15日号より