【2日間のまとめ】徹底して「人を生かす経営」を実践を 中同協幹事長 広浜 泰久氏

第43回中小企業問題全国研究集会

誇りを持って経営をしよう! 会員増強は「人命救助」

 今回2日間の全研を通してさまざまに学びを深める機会があり、次の3点にまとめました。

全社的な経営指針作成を

 1点目は徹底して「人を生かす経営」をすることです。社員のことをいつも考えていたとしても、実現できる環境づくりができていなければなりません。

 社会性すなわち企業の社会貢献性と人間性すなわち人間尊重の考えで経営を追求していくためには、それを支える利益を含めた科学性が不可欠。社会性と科学性と人間性の3つのバランスのとれた経営が望まれます。

 その進め方は大変難しいですが、体系的かつ合理的に経営を前に進めていくためには経営指針作成が一番確実であると私は確信しています。

 経営指針を作成した途端に経営がおかしくなる、という話をよく聞きます。社員との信頼関係がないと、結局「社長は俺たちをもっと働かせるためにつくったのか」と社員は思ってしまいます。

 経営指針作成の前段には社長と社員の信頼関係があるかないかが大変重要です。

世界に誇る中小企業

 2点目、とにかく誇りを持って経営しようということです。今回の全研のテーマは「中小企業憲章の精神を企業と地域のすみずみまで」です。では「中小企業憲章の精神」とは何でしょうか。それは、中小企業家であることと中小企業で働くことに誇りを持つことだと思います。同友会には地域になくてはならない素晴らしい企業がたくさんあります。

 相双地区の記録集のために集まったのは全国各同友会事務局員です。取材するなかで誇りを持った経営者に触れ成長して帰ってきたと聞いています。

 第9分科会では中小企業の海外展開について報告があり、海外における日本人に対する評価はものすごく高いと報告がありました。インドやバングラデシュでは、日本人はとても尊敬されています。先輩方の偉業です。やはり彼らの周りには尊敬すべき日本人がいて信頼されている、世界に誇る日本なのです。世界に誇れる日本、そして世界に誇れる中小企業という考えを広げていきましょう。

厳しい時代を乗り切るための会員増強

 3点目は会員増強です。「会員増強は人命救助だ」という新しい言葉を聞きました。会員によってはこのように考えているひとがいると驚きました。しかし、実際にそういう事例はあります。同友会にいつかお誘いしようと思っていた人の会社が倒産してしまい、その人が命を絶つことになった、とのこと。非常に残念な話です。

 これから社会全体が好景気に、良い方向に向かうかもしれませんが、一方で経営環境が厳しくなってくる場面が必ず出てくると思います。

 そのような環境下で経営について学ばず、谷底に落ちてしまう。谷底に落ちる前に、一緒に勉強して素晴らしい会社にしていきましょうとお誘いすることは本当に言い様によっては「人命救助」になるのではないかと改めて思います。

 これだけの材料があって、これだけの実践ができている同友会運動を、もっともっと周りにも広げていくためにあらためてみなさんと一致団結していきたいと思います。

「中小企業家しんぶん」 2013年 3月 15日号より