地域の将来を共につくろう~震災被災地で、合同入社式・新入社員研修開催

 全国の同友会で合同入社式・新入社員研修会が行われています。震災と原発事故の影響を受けた厳しい雇用状況の中、若者が残ることができる地域をつくろうと奮闘している福島同友会いわき地区・岩手同友会・宮城同友会での模様を紹介します。

【福島】地域の復興と将来を担う若者の門出を地域全体で祝う

 福島同友会の合同入社式・新入社員研修会は、1983年度より始まり、今回で30回目となりました。今年度も例年通り3月下旬に福島県内5会場(福島・郡山・会津・いわき・相双)で76社195名の会員企業新入社員の参加がありました。

 甚大被災地でもある、福島県いわき市を中心とした浜通り(沿岸エリア)のいわき会場では、2005年度から継続開催していますが、一昨年の震災発生年度の休止を経て、今回は3月25日に、合同入社式・8社31名、新入社員研修・9社32名の参加で開催されました。

いつまでも向上心を

 はじめに、渡部明雄氏(いわき地区会)が、(1)きちんと挨拶をする(2)当たり前のことを、馬鹿にしないでちゃんとやる(3)失敗を恐れずに挑戦し、同じ失敗は繰り返さない…といった新社会人としての心構えを語りながら、「私達、中小企業家と共にいわきを担い、共に頑張ることで、みなさんが成功することを願います」とあいさつ。

 先輩社員を代表して昨年の合同入社式に出席した梶田1000奈美さん((株)アミゼ)が、自らの実体験になぞらえて、「“知っている事”と“知っていると思っている事”は違います。分からない事はすぐに聞き、先輩の真(ま)似(ね)をし、自ら仕事を見つけあきらめずにやる事が仕事を覚える近道だと思います。いつまでも向上心をもち続け成長して下さい。みなさんが今日の喜びと感謝の気持ちを忘れずに、新しい職場でご活躍されることを祈ります」との歓迎の言葉を述べました。

 それを受けて、新入社員代表の本間大也さん((株)三恵クレアいわき)が、「2年前の震災では、母校であるいわき海星高校も津波に襲われ、1階が水没するなど多大な被害を受け、厳しい環境の中での学生生活を体験しましたが、復興には多くの方々から力強いご支援があり、改めて人の“絆”と人を思いやる気づかいの大切さを痛感いたしました。また、この度母校が春の選抜高校野球大会に出場するにあたり、同友会の会員企業のみなさまを始め、地域のみなさまから心温まるご支援、ご声援をいただき誠にありがとうございました。残念ながら初戦で敗退いたしましたが、この事は出場した選手はもちろんですが、地域や学校関係者にとっても一生忘れることの出来ない、素晴らしい思い出となり、私達も大変誇りに思っております。最後になりましたが、我々新入社員は、それぞれの仕事を決めた時の思いを大切にし、諸先輩の方々のご指導をいただきながら、社業の発展に尽くすことを誓います」との力強い決意表明を述べました。

地域全体で祝う

 今回は、いわき市長・いわき商工会議所会頭・ハローワーク所長の各ご本人の臨席及び祝辞があり、新入社員の出身高校の先生方や父母、そして会員企業関係者の参加を加えた地域全体で新入社員を祝う形となりました。また、大熊町や南相馬市など相双地区からいわき地区へ進出した企業2社からの入社も、昨年に引き続き計7名あり、TV局の取材も入りました。

 一人ひとりに記念品を手渡しで贈呈し、全体で記念撮影をした後、共同求人・社員共育委員による手づくりの新入社員研修が半日かけて行われました。「学校と職場の違い」では、社会人としての心構えについて会員経営者(先輩社員)が講義、「社会人・企業人としての基本マナー」は接客や電話の応対など社会人・企業人としての基本マナーや、報・連・相の大切さを先輩社員が指導、「中小企業で働く意義・やりがい」は会員経営者が実体験を交え情熱を込めて講義しました。

【岩手】私たち中小企業の力で地域をつくる

 岩手同友会の合同入社式・1泊研修会は4月1日から2日、ホテルメトロポリタン盛岡ニューウイングにおいて、これまでで最高の22社51名の新入社員を迎え開催されました。

 挨拶に立った、代表理事の村井良隆氏((株)あさ開社長)は、「震災から2年が経過し、つち音は聞こえ始めましたが、東北の復興は始まったばかりです。その復興の原動力となるのは、地域経済を支える中小企業です。私たちに唯一できるのは、それぞれの企業をしっかりと支え、中小企業の力で地域をつくり、全国にその姿を伝えていくこと。ぜひ1年後、皆さんが新たな後輩を迎え育てていく立場として立っていただきたい」と激励しました。

生きがいのある人生を創造しよう

 入社2年目の信幸プロテック(株)社員の菊池達也さんは、「つらい時期はありましたが、今ではできることが増える充実感で一杯。皆さんも仕事にやりがいが持てる時期が来ることを楽しみにしています」と先輩社員としての激励のメッセージを、2年目らしく熱くその想(おも)いを伝えました。

 新入社員代表として決意表明に立った(株)陸前高田自動車学校の川原和也さんは、「依然として震災後の環境が厳しい中、私たち新入社員を迎え入れてくださった各企業の方々に感謝申しあげます。この決意を忘れず、被災地岩手の着実な復興に貢献できるよう日々精進します」と応え、厳粛な中に感動ある新入社員入社式となりました。

 また記念講演では、昨年に続き「生きがいのある人生を創造しよう」をテーマに神戸大学名誉教授・二宮厚美氏が講演に立っていただきました。「おそらく全国の入社式で、このテーマで記念講演をするのは、ここだけです。『情勢は大変厳しい。会社のために貢献してもらいたい』というのがほとんどでしょう。ところが中小企業家同友会の入社式は、『皆さんにとって生きがいのある人生を創造してもらいたい。そのために私たちは、働きがいのある企業をつくる』と経営者の方々が呼びかけている。みなさんは本当に幸せだと思います」と話し、あらためて入社式の持つ意味を確認することとなりました。

マナーは人間としての生き方そのもの

 その後、つなぎ温泉に移動して1泊で行われた研修会でも「私たちは何のために働くのか」をテーマに深く学び合いました。なかでも震災で会社の全てを失った陸前高田市の(株)長谷川建設・長谷川順一社長の体験報告では、「人はあまりの惨(むご)さを体験すると、諦めることを諦める」「震災後モノには全く執着がない。一番大切だと思えるものは、想いしかない」などの言葉に、「私たちに希望を持って岩手に生きる社会人として頑張って欲しい、という想いが込められていると感じた」「自分が今後何をすべきか真剣に考えた」など、自分のこととしてしっかりと受け止めている姿がありました。

 また現代のマナーの講座では、「マナーは人間としての生き方そのものと知って、これで自分の生き方が変わっていくのだ、と嬉(うれ)しくなった」「相手の立場に立って深く考えることが、自分自身の人生を豊かにする第一歩のように感じた」などの感想があり、人間はどうして学ぶのか、共に考えかかわり合う学び合いが、新入社員にとっても新鮮に響いていく様子がありました。

 最後に全員が「今年私が一番大切にしたいこと」を色紙に記入し、自分の想いを込めて発表しました。一人ひとりの言葉に岩手の復興を思う強さを感じた2日間となりました。

【宮城】これからが人生の本番!

 宮城同友会では4月1日から2日、2013新入社員合同入社式と共育研修会を開催し、会員企業計57社130名の新入社員と計94名の関係者(会員企業代表者・新入社員父母・来賓・講師など含む)が参加しました。

 合同入社式では2012年度に協定を締結した(公財)仙台市産業振興事業団・奥田潤一理事長に来賓挨拶をいただき、その後、代表理事からお祝いの言葉、先輩社員からの激励、新入社員の決意表明、記念講演などを行いました。

 共育研修会では、第1講に先輩社員の体験報告、第2講にブロックゲーム、第3講にマナー研修、第4講に総括講義を行い、新入社員が「働くことで自分は何を得られると思いましたか?」という討論テーマでグループ討論を実施し、最終発表を行いました。

 入社式での先輩社員の激励、新入社員の決意表明、共育研修会の先輩社員の報告を抜粋して掲載します。

「中小企業家しんぶん」 2013年 4月 15日号より