同友会の理念を活かした事業承継をどのように準備・実行するか

【「同友会景況調査(DOR)2013年1-3月期」オプション調査から】第1回

立教大学大学院ビジネスデザイン研究科教授 廣江 彰(中同協企業環境研究センター委員)

 中同協は本年実施の「同友会景況調査」1-3月期調査において、同友会企業の「事業承継」に関するオプション・アンケートを実施した。このアンケートは2007年7-8月期調査に次いで行われたものである。以下、当アンケートから読み取れる事業承継の実情、課題などについて2回連載する。

同友会型事業承継に欠かせない、会社の「社会的使命」と「社会的責任」

 「会社とは何か」に社会の関心が寄せられて久しい。今また、オリンパスの巨額損失隠しや西武ホールディングスへの同社大株主サーベラス(アメリカの投資会社)による株式公開買付(TOB)を機に、「会社は誰のものか」と問われている。会社とは何か、誰のものかは、企業規模の違いを超えた、社会という視点からみた根源的な問いであり、また会社の事業展開をも規定する条件となる。その同じ問いが、社会的な文脈の上で事業承継を捉えることを求め、会社個々の意思決定にはとどまらない社会的な重要性を担わせることになる。

 中小企業家同友会の理念では、「国民や地域と共に歩む中小企業」と自己規定した上で、ことに地域とのかかわりで中小企業の「社会的使命」と「社会的責任」を「大切にしたい」と強調している。事業承継は会社個々の課題ではあるが、「社会的使命」と「社会的責任」の承継という内容を併せ持っている。

同友会「事業承継調査」結果の概要

 オプション・アンケートの回答企業数は2007年7-9月期調査(以下前回調査)が931、2013年1-3月期(以下今回調査)は962とほぼ同数である。回答企業の基本属性を経営者(代表取締役)経験年数、経営者の年齢、後継者の決定状況という3点についてみると、表1~3のようになっている。

 経営者の経験年数は、表1にあるように今回調査からは「10年未満」、「10年以上20年未満」が前回調査に比べそれぞれ5.8%、2.3%増加し、相対的に短い経験の経営者が回答企業には多くなっている。また、経営者の年齢は表2のように「40歳未満」で1.8%、「40歳以上50歳未満」が1.9%と微増し、逆に「50歳以上60歳未満」では6.7%という比較的に大きな減少をみている。このように表1、2からは経営者の若返りを推測させるが、その根拠が調査から得られているわけではない。

 さらに、後継者の決定状況では「すでに決まっている」、「決めるべき時期にきているが決まっていない」が今回調査では0.9%、1.7%微減、「いまだ決めるべき時期ではない」が2.8%増加している。ただし、その増減は同様に僅かであり、2つの調査期間に有意な変化が起こってはいないと判断できる。

後継者決定の正念場はこれから-同友会「事業承継調査」結果の特徴

 中小企業の事業承継調査では、「特別企画 後継者不在企業の実態調査」(2011年、帝国データバンク)、「事業承継実態調査 報告書」(2011年、独立行政法人 中小企業基盤整備機構)がある。しかし、いずれも対象企業の属性に大きな差異があって厳密な比較はできず、あくまでも参考にとどめたい。

 帝国データバンク調査は、「分析可能な2008年以降の信用調査報告書がある約41万社を対象」に後継者不在企業を分析したものであるが、その7割が「後継者不在」だとしている。それに比べれば、半数近くで後継者が決まっている同友会調査の結果は事業承継が順調に進んでいるといえるかもしれない。

 しかし、整備機構調査の結果は違う。国内中小企業の業種・規模構成に倣い2011年10,000社を対象に郵送で行った大規模なアンケート調査であり、回収率は28.5%と高い。事業承継に関する詳細な項目のうち、「後継者の決定状況」、「すでに決まっている後継者の属性」について比較すると、表3からは2013年同友会調査で「すでに決まっている」が44.3%であるのに対し、整備機構調査では52.4%に上る。

 表4では「すでに決まっている後継者」のうち後継者は「子供」と「子供以外の身内」が計74.2%、後者は双方で70.4%という差異がある。異なる調査の結果であって厳密な比較には相応しくないが、同友会企業の後継者決定にやや遅れが、また後継者は身内からという傾向が想定可能である。同友会調査では経営者の年齢は「60~70歳未満」が最多である。つまり、後継者決定の正念場を迎えているということを示すものと考えられる。

(連載続く)

「中小企業家しんぶん」 2013年 6月 25日号より