憲章の内容実現はわれわれの使命~(株)紀之国屋 会長 中村 高明氏(福岡同友会理事)

【特集】中同協第45回定時総会―問題提起(地域づくり)

中小企業は地域雇用の源

少子高齢化、人口減少、大企業の海外展開、そして税負担の中心でありました団塊の世代が一線を退き、定年を迎え、地方自治体の財政収入が激減し、ますます地域経済は疲弊化しています。第9分科会から東日本大震災後の陸前高田の復興、第十分科会では秋田県仙北市の観光客の激減とそれに伴う条例づくり、第11分科会から宮崎県川南町の口(こう)蹄(てい)疫(えき)被害と産業連関分析による条例づくりの報告がありました。

災害があると地方経済は一瞬のうちに打ちのめされてしまいます。打ちのめされ、悲しみや絶望の中から人々は何とかして立ち上がる。その悲惨な状況から立ち上がる様を分科会では報告していただきました。

しかし、この悲惨の中から立ち上がろうにもそこに仕事がない。あるいは働く場所がなく生活ができないという報告もありました。私は福岡県直方市の生まれで、かつては炭鉱の中心でした。エネルギー革命にあい、次々に炭鉱が閉山され、たくさんの人が仕事をなくしました。北海道の夕張・空知や福島県の常磐炭鉱へ移り住んでいきました。

この当時は仕事があったからよかったものの、現在は都心部を除き仕事がありません。中小企業と自営業が数多く立ち上がり、そして繁栄し地域に根付いて雇用の源にならなければなりません。そのためには資金が必要です。第8分科会で信用金庫の重要な役割について報告がありました。

地域づくりは仕事づくり、雇用づくり、暮らしづくり

地域づくりとは仕事づくり、雇用づくり、そして人々の暮らしづくりであります。別の言葉で「生きる・暮らしを守る・人間らしく生きる」という3つの課題を実現することでもあります。赤石・中同協相談役幹事は、大企業の海外移転または撤退の後、地域の山並みには赤はげ部分が残ったと言われています。その赤はげ部分を修復するには、そこに住んでいる人たちにしかできません。

地域に根ざした仕事。小さな仕事でもそれを行う中小企業と自営業という木を1本1本植えていかなければ赤はげ部分は修復できません。まさしく緑化事業と言われています。同友会の理念の1つであります「国民や地域と共に歩む中小企業」の下での「地域を愛し、地域を支え、地域に生きる中小企業と自営業」の存在の重要性は理解いただけると思います。

私たちには幸いなことに閣議決定された中小企業憲章があります。憲章は先ほどの緑化事業の理念と方向を示し、かつ緑化事業を継続し広げ育てるための具体的な支えなのです。憲章の存在を私たちがまず家族や社員、従業員に知らせ、地域の隅々まで知っていただく。そして、国会決議という世論を創っていかなくてはなりません。国会決議を行い憲章の内容を実現していくことがわれわれ中小企業家の責務ではないかと思います。

一方憲章を具体化するための中小企業振興基本条例の制定運動、現在26道府県99市区町で制定されていますが、これをさらに広げていかなければなりません。

道徳なき経済は犯罪

昨年私の住んでいる直方市で振興条例ができました。私たち筑豊支部の役員が市長や副市長、商工観光部に何回も条例の必要性を説き、何とか市の幹部が動き他の経済団体の若手を集めて、一緒に中小企業憲章の勉強や振興条例の必要性を学びました。北海道の帯広市・釧路市や東京の墨田区、大阪大東市・八尾市の条例をみんなで学びました。行政と一緒に大東市と八尾市に赴き、大阪同友会の役員の方々と交流しました。ようやくこれから産業振興会議が始まります。2年半の歳月が流れました。粘り強く活動しなければ地域を元気にする方法は他にありません。粘り強く活動することが結果的に私たち自身のお客さまづくりにつながります。

最後に、二宮尊徳が「道徳なき経済は犯罪であり、経済なき道徳は寝言である」と言っています。地域において働く場所がなければ、地域文化さえ守れずに地域は退廃していきます。そうならないようにお互い努力していきましょう。

「中小企業家しんぶん」 2013年 8月 5日号より