第2回アジア視察研修会に15名が参加 滋賀同友会専務理事 廣瀬 元行【滋賀】

東南アジアの発展に貢献する道を探る

 滋賀同友会海外ビジネス研究会は、9月8~15日、第2回アジア視察研修会をおこない、ベトナムのホーチミンとカンボジアのプノンペン、シェムリアップを15名で訪問しました(協同組合HIP滋賀・共催)。廣瀬元行・滋賀同友会専務理事に視察の概要をレポートしていただきました。

近代化しつつある大都市ホーチミン

 今回のアジア視察研修会の主な目的は、中小企業が本業を通じて東南アジアの発展に貢献する道は何かを探ることです。

 ホーチミンは近代化しつつある大都市。昨年訪問した素朴な感じのハノイとは異なり、同じベトナムでも北と南の違いを実感しました。この地では慌ただしく4社を訪問しましたが、現地企業の共通点は、日系メーカーをメイン顧客とし、そのパートナー的な存在として工業化の波に乗り急激に成長していること。

 日系のIshikawa Seiko Vietnam社(本社は愛知同友会会員)は、日本で研修を受けたベトナム人社員の「地元で工場経営を!」という願いを実現するために設立。ベトナムの人材をベトナム人経営者が教育する点は、現地企業と同じです。さらに、ベトナム経済の発展を担うという志や夢を持ち、日本の生産管理を学び、レクリエーションや社員旅行で「お金ではない心の関係」を大切に、社員との一体感を強めています。現地企業の技術と経営姿勢に触れ、「アジアの成長を日本に取り込む」という感覚だけで進出しても、そうはうまくは行かないだろうと感じました。

 現地資本が経営する日本向け人材教育企業では、日本で研修を受けて日系企業で働きたい、ベトナムでビジネスをしたいという若者が教室いっぱいに日本語とカイゼンの授業を受けていました。「何のために日本で研修を受けるのか」という考え方を一番大事にしていると聞き、その思いを実現させる場としての、日系企業の責任は大きいと言えます。

 ホーチミンでの移動中、目に付いたのは道路に面して生活用品や食品を販売する店、バイク修理店、軽食店。工業化が進む一方で、無数の自営業が地域の暮らしを担っていることが見て取れました。

日系企業の進出も増えつつあるカンボジア

 続いての視察先はカンボジア。経済発展はベトナムに比べ大きく後れをとっています。その背景には、1970年代の後半にポルポトによって知識人のほとんどが虐殺されたことがあります。2014年にはイオンモールが進出するそうですが、地域の人々の暮らしからは遠い存在かも。日常の暮らしは、カンダール市場で早朝から繰り広げられる活気ある商いの中に見て取れました。

 カンボジアでは国策で経済特区が整備され、2011年以降は日系企業の進出も増えています。大学や国際交流機関で日本語を学ぶ人も増え、経済特区では進出企業をワンストップで支援。しかし、電力は高く不安定。農村から来る労働者は工場勤務に馴染(なじ)みにくく、離職率は10%/月も。人件費は3年で30%アップ、さらに休日が多く「思ったほど生産性が上がらない」という現場の悩みも伺いました。

 国そのものに目立った産業が無い中で、手工芸品の産地とお客さんをつなぎ、商品をブラッシュアップして地域の自立を目指しているのが、カンボジア情報サービス社の社長、山崎幸恵さん。そのアンテナショップ「ニョニュムショップ」では、日本の技術指導で焼かれた「コンポチュナン」ブランドの陶器が注目されています。同じ思いに触れたのが、シェムリアップのアンコールクッキー店。日本人女性社長の掲げる企業理念には、働く場を作り、人々が自立し、自国の未来を切り拓(ひら)いていくことが謳(うた)われていて、心に響きました。

 ベトナムもカンボジアも外国資本から選ばれる国づくりを進めていますが、工業化や大手外資導入一辺倒の発展ではなく、内なる資源を掘り起こし共に仕事を創り出しながら自立化へお役立ちをする。このことに、私たち中小企業の可能性と価値があるのではないかと考えさせられた視察となりました。

「中小企業家しんぶん」 2013年 10月 15日号より