「生きる力を育む教育」

【変革と挑戦―各同友会の実践事例から】53

愛媛同友会

 愛媛同友会は、1985年の創立以来「教育に熱心な会」「人育てに熱心な会」と県内で評価され、1994年に中小企業団体では全国に先駆けて中学生の職場体験学習を受け入れ、現在会内で取り組んでいる「キャリア教育」活動の原点となっています。

 その受け入れを通して、「働くこと」の意味と役割について、そして「職場」の持つ教育力を、企業・学校・生徒それぞれの関わりの中で確認しました。さらに、「職場体験学習」を同友会運動として取り組んだ成果として気付き、確認できたことは“生徒に経営理念を!学校に同友会理念を!”伝えることの重要性についてでした。

 小学生や中学生を対象とした出前講座。大学生のインターンシップ(就業体験)や愛媛大学法文学部での提供講座。そして、雇用支援や学生・若者への就職・自立支援のための「チャレンジジョブ」活動など…。愛媛同友会の「キャリア教育」における一貫したプログラムの裾野を拡げ、内容を豊かにするための土台に、「何のために」を問い続ける“理念”があることを確信しました。

 地域社会において中小企業が果たす役割についての理解と、労働することや職場・地域で生きることの価値について、労使間で密接なコミュニケーションをとり、お互いをパートナーとした社会的関係の中で雇用の継続を実現することに努力することで理解する。どんな境遇の人も、それぞれのいのちを大切に主体的に生きる力を育むために、共に学び共に育ち合うことで生きがいややりがいを感得する。このように愛媛同友会では「キャリア教育」を『生きる力を育む教育』と定義づけ、職場や地域の中で体系的に進めるための、すなわち愛媛同友会が目指す「人を生かす経営の総合実践」へ向けた『キャリア教育推進のための手引書』を作成するに至りました。

愛媛同友会「キャリア教育」の実践的歩みが、戦略的な産官学連携の歴史と連動していることも大きな特徴としてあります。

 今後の成果目標として、手引書のさらなる開発とその担い手を育成して、人的データベース化を計ること。そして、目指すべきモデル企業として認知されるための仕組づくり「応援企業認定制度(仮称)」の構築を東温市や松山市の中小企業振興基本条例と関連させて検討しています。

恭栄自動車(株) 代表取締役 愛媛同友会キャリア教育委員長 武田正晴

「中小企業家しんぶん」 2015年 5月 5日号より