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【「外形標準課税適用拡大」を検証する】第1回 応益課税への転換ねらう 憲法上大きな問題

 政府は法人税引き下げの財源埋め合わせ策として、中小企業への課税強化を検討しています。外形標準課税適用拡大により中小企業にどのような影響が及ぶのか、関東学院大学法学部教授の阿部徳幸氏(阿部徳幸税理士事務所所長・東京同友会会員)が3回の連載で解説します。

阿部先生写真

関東学院大学法学部 教授 阿部 徳幸(中同協税制プロジェクト委員・東京同友会会員)


 安倍政権は現在、企業の国際競争力の視点から法人税率の引き下げを目指しています。そして、この税率引き下げに伴う税収減の埋め合わせとして、法人事業税における外形標準課税の適用拡大がいわれています。

 この外形標準課税は現在、資本金等の金額が1億円を超える法人に適用されていますが、これを資本金等1億円以下の法人にまで適用しようとしているのです。中同協ではこれに先駆け、6月4日付で「会長談話」として反対の意見表明をしたところです。(本紙6月15日号既報)

 この外形標準課税の適用拡大について、現在、政府税調を中心に議論がなされています。

 そこでは、(1)税負担の公平性の確保、(2)応益課税としての税の性格の明確化、(3)地方分権を支える基幹税の安定化、(4)経済の活性化・経済構造改革の促進、を理由にその導入が急がれるとしています。

 現在7割を超える法人が赤字です。現在のルールですと赤字の中小法人には事業税がかかりません。しかし、赤字法人といえども地方団体が提供するサービスを受けている以上、その受益の額に応じた税を負担しなければならないとの議論です。

 これが「税負担の公平性の確保」ということです。「応益課税としての税の性格の明確化」という議論も同じような内容です。

 つまり、税を国に納付する国税と地方団体に納付する地方税とに区分した場合、国税には高額所得者からは多額の税を徴収し、いわゆる貧困層に分配する「再分配機能」が求められる。そこでは負担能力に応じた課税が必要である。しかし、地方団体の役割は「公共サービスの提供」である。公共サービスを受けるからにはその受けたサービスに応じた納税が求められるということなのです。

 現在、中小法人の法人事業税は「所得」に課税されており負担能力に応じた課税となっています。この外形標準課税を中小法人にも適用することにより、受ける利益の大きさに応じた課税(応益課税)としての法人事業税の性格を明らかにしようとしているのです。

 地方自治法10条2項は「負担を分任」という言葉を使っています。この規定から地方税においては応益課税が支持される傾向にあります。

 しかし、わが国憲法は、租税負担のあり方については、国税・地方税を問わず、その能力に応じた負担しか求めていません(憲法14条他)。したがって、この応益課税を前提とした議論は憲法上大きな問題があるといわざるを得ません。

 ここでは触れられませんでしたが(3)・(4)についても多くの問題がありそうです。

 次回、この点について検証してみたいと思います。

「中小企業家しんぶん」 2014年 7月 5日号より

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