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中小企業の存在脅かす税制

【「外形標準課税適用拡大」を検証する】 第3回

関東学院大学法学部 教授 阿部 徳幸(中同協税制プロジェクト委員・東京同友会会員)

 前回までは、外形標準課税の中小法人拡充論について若干の検証を行ってみました。今回は実際に外形標準課税が中小法人に拡充された場合、税負担はどのようになるのかをみてみることとします。

 現状の法人事業税の計算は、所得金額に税率を乗じて求めます。これを「所得割」といいます。

 具体的には原則として、所得が400万円までは5%、400万円を超え800万円までは7・3%、800万円を超える部分には9・6%となっています。したがって赤字の場合には納税は求められません。さらに所得が多くなればその分高い税率の負担が求められ、能力に応じた課税となっています。

 一方、外形標準課税の場合は、(1)付加価値割、(2)資本割、そして(3)所得割の合計額が納付税額となります。

 (1)付加価値割とは、収益配分額に0・48%を乗じて求めます。ここで収益配分額とは、「報酬給与額」、「純支払利子」、そして「純支払賃料」の合計額に「その年の損益」をプラスマイナスして求めます。なお、「純」とあるのは支払ったものと受け取ったものを相殺した残りという意味です。

 (2)資本割とは、資本金等の0・2%、(3)所得割は現状のものと仕組みは同じですが、税率が3・8%、5・5%、7・2%と引き下げられます。

 つまりこの制度とは、給与、支払利息、そして支払家賃、さらには資本金額に課税するということなのです。一般的に小規模企業ほど労働分配率は高い傾向を示しています。財務省の調べによれば、大企業で61%、中堅企業で71%、中小企業で78%、そして小規模企業では83%(いずれも2012年)となっています。

 現在7割を超える企業が赤字です。しかしこの外形標準課税が中小企業まで拡充されれば、この7割を超える赤字企業にも新たな税負担が求められることになるのです。

 中小企業庁の推計によれば、従業員10人の赤字中小企業に対して26万円の新たな税負担が求められるとされています(当然、黒字法人の場合、さらなる負担増が求められます)。赤字法人の場合、資金繰りが苦しくなるのが一般的です。そこへ新たな税負担が強いられれば滞納となるのは必然です。この税制も滞納と隣り合わせの恐ろしい税制なのです。

 中小企業の場合、その実態をつぶさに観察してみれば、そこではオーナー株主の生存権(憲法25条)の延長線上に企業は存在します。この制度導入によりオーナー株主の生存権が脅かされることにもなります。さらには給与に課税されることから従業員の皆さんに対するリストラ促進税制ということもできるのではないでしょうか。

 アベノミクスは成長戦略をいいます。しかし、地域経済活性化の担い手である中小企業の存在すら脅かす税制で成長戦略が図れるはずがありません。

(終)

「中小企業家しんぶん」 2014年 8月 5日号より

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