知的障害者楽団「ラブバンド」がハワイで公演―ラブバンド 代表・指導 濱田 興隆(富山)

夢がかなってゆく 音楽は世界共通語

 富山の知的障害者楽団「ラブバンド」は、結成15周年を迎えた今年、2月11~17日に2回目の海外公演を実現しました。公演地は、米ハワイ州オアフ島にあるヘレマノ・プランテーション(障害者自立支援施設)と、ポーハイ・ナーニ・リタイヤメント(高齢者医療付施設)の2カ所。バンドのメンバーには会員企業で働く社員も参加しており、結成当初から、富山同友会も応援してきているバンドです。ラブバンドの代表で富山同友会会員の濱田興隆氏からの寄稿を、『同友とやま』より紹介します。

障害者自立支援施設では文化の交流

 2月11日、1行40名の団員(メンバー20名)は中部国際空港を飛び立ち、ホノルルに向かった。

青く澄みわたった空と温暖な気候は、雪の富山とは180度の変化に心が自然にはずんできた。到着した翌日、ホノルル市内からバスで45分位のところにあるヘレマノ・プランテーションは広大なパイナップル畑の中にある施設で演奏を行った。ここには、中国やアジア系の障害者が就労している。

 バスから楽器類を運び出し会場に設置する皆の姿は、期待と不安の入り混じった気持ちがしぐさに現れている。そんな心配もオープニングの「上を向いて歩こう」の演奏が始まると、いつもの状態以上にはつらつと演じていった。数曲演奏後、メンバーの親の方たちが作ったマスコットを団長の中尾順一さん(富山同友会会員)から渡された。

 予定の演奏が終わったところで、ラブバンドをバックに歌いたいという女性が現れた。曲目は「マイウエイ」。もちろん英語で歌ってくれた。それは迫力のある歌声で、歌い終わったとたんに、感動の拍手が場内に響きわたりました。音楽はまさに世界共通語と実感した瞬間でもあった。

 施設の方々からは、中国の春節で獅子舞を演じてくれました。「チキンダンス」「フラダンス」の指導も行なわれ、本当に楽しい交流が行われた。

 終了後は、施設内でのレストランで食事をした。そこでも給仕などのサービスをしてくれるのもそこで働く障害者の方々であった。しっかりと雇用の場が確保されていることに感銘した。日本で真っ先に人員整理の対象になるのに…。

高齢者とも感動の涙で抱き合った

ラブバンド

 2月14日、ホノルルから30分位の郊外にあるホーハイ・ナーニ・リタイヤメント(高齢者医療付施設)での演奏会場に向かった。会場前では施設責任者の女性の方が笑顔で迎えてくださいました。演奏前に注意事項として、補聴器を付けた方が多いので、あまり大きな音を出さないことと、演奏時間は30分位にしていただきたいと要望が出された。

 突然のことだったので多少の戸惑いがあったが、演奏を進めているうちに、そんな心配は吹っ飛んでいた。高齢者にもかかわらず、体をゆすり、手拍子をしてだんだんと興じて行く様子がジンジン伝わってきた。ここでもプレゼントの交換をし、外人の女性から生まれて初めて頬にキスをされたのにはびっくりするやらうれしいやらで一瞬、舞いあがってしまった。そんな状態に場内は笑いの渦が充満した。

 演奏を進めてゆくうちに、メンバーのひたむきな演奏の姿に目頭を押さえる方が増えていった。演奏はアンコールをふくめて一時間にも及んだ。終了後は、お互い抱き合い、涙の感動的な場になっていた。「また生きる勇気が増しましたよ」「いつまでも元気でいましょう」と手を固く握りあい、別れを惜しんで会場を後にした。

夢は必ずかなえよう

 バスの中では、やり終えたことでメンバー、親の方々、サポーターの顔はハワイの空のように輝いていた。口々に、来てよかった、よかったと、充実感で満ち満ちていた。

 「夢は必ずかなえよう」と、親子ともども元気に次のステップに向かって新たな気持ちが芽生えてきた。4月には金沢、6月には富山でプロのミュージシャンとの競演、10月には東京での演奏の要請が来ている。

 本当に夢がどんどんかなってゆく…かなってゆく…かなってゆく…。

「中小企業家しんぶん」 2010年 5月 5日号より