人も企業も地域も地球もみんな元気に~「2009同友エコ」応募企業からみえてきた企業革新の姿

【環境経営で企業革新を―「同友会エコ」受賞企業の取り組み】(9)最終回

 昨年9月5日付から始まった連載「環境経営で企業革新を」は、12月15日付までに「同友エコ」受賞企業を中心に8社の取り組みを紹介してきました。現在、「同友エコ」応募企業から24社を紹介する「環境経営先進事例集」(1月末発行予定)の編集作業も進められています。この連載を終えるにあたり、事例集での紹介企業も含め、環境経営でどのような企業革新が行われているのか、まとめてみました。

 「環境経営・CO2削減、はじめの一歩」とする「同友エコ」の取り組みが、2009年7月の中同協第41回定時総会で「同友エコ宣言」と共にスタートしました。これは、事業所数でいえば圧倒的多数を占める中小企業が、持続可能な社会づくりに貢献していくこと(中小企業憲章制定運動がめざす新たな社会づくりの土台となる)、環境経営を推進することで企業革新と新たな仕事づくりにつなげていくことを目的としたものです。

 昨年7月の大分での全国総会では、「2009同友エコ」応募企業191社から、会長賞、幹事長賞などの表彰式が行われました。そこでは、業務改善や社員の変化、新たな仕事づくり、地域との関わりなどの視点から、企業革新にどのようにつながったかが注目されました。

「環境」を強みに新たな仕事づくり

 廃棄物処理業などもともと「環境」との関連が深い業種だけでなく、「環境」に配慮していることを自社の強みとしていく企業が業種を超えて広がっています。

 輸出製品にかかわる製造業では、国際的な環境規制の強化を受けて、激しくなるグローバル競争の中でますます「環境」への配慮が必須条件となってきています。そこでは、最低限の規制に対応するだけでなく、「環境」に強いことを自社の強みとしている企業の事例が目立ちました。

 航空・宇宙関連業界で生きる川西航空機器工業(株)(兵庫)では、絶対安全を追求した厳しい国際基準を全て満足させた製品作りを行うだけでなく、社内でも省エネや太陽光発電設備の導入など環境問題に積極的に取り組み続けることを通してアイデアや技術開発にもつなげ、「環境に取り組むことは企業の寿命を延ばすことになる」と断言します。

 情報収集・分析を通して、厳しい国際的な環境規制に適合した製品・部品などを国内外から調達できることを強みとする(株)カテックス(愛知)では、さらにその強みを生かして自ら環境製品の開発にも力を入れています。カーボンオフセット年賀状で植林活動を行うなど、エコにこだわった印刷で受注を増やす(株)プリプレス・センター(北海道)など、環境を強みに積極的に事業展開を図っています。

 長年、命と向き合い、地域に支えられてきたことを自覚する中で、地域や地球に何か貢献できないかと環境経営に取り組み始めた(有)西田葬儀社(愛知)では、社員の提案で使用済みのローソクをアフガニスタンに贈るなどの社会貢献に取り組んでいますが、消費者の環境意識の高まりから「エコ葬儀」への要請にも積極的にこたえようとしています。

環境経営は経営指針の確立から

 未来工業(株)(本社・岐阜、熊本事業所が「2009同友エコ」で中同協会長賞を受賞)では、経営理念に「常に考える」を掲げ、社員が積極的にアイデアや提案を出して新製品開発や業務改善に取り組むことが社風になっていますが、環境経営でもそのことが遺憾なく発揮されています。

 中同協幹事長賞を受賞した(株)ヴィ・クルー(宮城)では、大型バスの車体整備が本業ですが、「人・車・地球を元気にするメーカー」という経営理念を掲げ、全社員でその理念を共有していく中で、メンテナンスを通した気づきをエコ商品開発につなげていきました。

 同じく地球環境委員長賞を受賞した(株)山田製作所(大阪)は、「経営理念追求型企業」として徹底した3S活動を推進し、若者が生き生き働く会社として国内外から見学者が絶えない会社ですが、環境経営を意識化することで、作業環境改善と省エネを同時解決する社員のアイデアを実現させるなど、企業革新が進められています。

 「共に育つ」を経営理念に掲げる(株)オンザウェイ(東京)も、「みんなと共に、しあわせになっていこう」「社員も顧客も地域も、そして地球もみんな仲よくしあわせになるにはどうしたらよいか」と、一人ひとりが自ら考える社風が造られ、環境経営に自然に行き着きました。

 「環境経営」が単なる省エネに終わらず、社員の自発性・創造性を引き出し、業務改善や新たな仕事づくりにつながるには、経営指針の確立・実践が不可欠であることが分かります。

地域と共に歩み、社員に誇りと自信

 環境経営に取り組む企業の共通性として、地域との関わりも重要です。

 家庭や事業所から出る廃棄物を収集運搬する(株)グリーンロジスティック(熊本)は、地域との関わりを重視していきます。

 当初、回収した廃食油から精製したバイオディーゼル燃料を社内だけで活用していましたが、「地域から排出される廃棄物は地域の人たちに役に立ち、地域の目に見える形でリサイクルすべきではないか」と考え、その燃料で車を走らせ、子どもたちの登下校時の安全をパトロールする「菜の花パトロール」をはじめます。廃食油回収の仕組みも地域の協力でつくりました。このことを通して、社員にも自信と誇りが生まれ、さらに「地域になくてはならない企業をめざす」といいます。

 半導体関連の大分デバイステクノロジー(株)(大分)は、「地域の豊かな自然を守り、かけがえのない地球環境を健全な状態で時代に引き継いでいきたい」と環境経営に力を入れています。半導体の行く末も見据えながら、環境関連で新事業の立ち上げも模索しています。

 地元に棲息する絶滅危惧種のカエルの保護運動に取り組む(株)サンキョウ‐エンビックス(岡山)や、熊本同友会の「同友の森づくり」運動など、地域の自然保護活動も盛んに取り組まれています。

 さらに、社員の家族まで巻き込んで「エコファミリー」に参加したり、派遣先でも意識的に省エネやゴミ分別などで問題提起をするなど、地域に根ざす中小企業ならではの取り組みと言えます。そのことは、同じ地域に暮らす社員にとっても自信と誇りにつながり、地域になくてはならない働きがいある会社となっていきます。

 持続可能な社会づくりに貢献する中小企業となることは、地球環境のためだけでなく、企業の持続可能な発展につながるとともに、社員が生き生き働く会社として、人も企業も地域も地球も皆元気になる循環を生むことができます。(株)リバイブ(愛知)では、そういった社会を「善・循環型社会」と呼び、その実現を使命としています。

 (株)リバイブ社長で中同協地球環境委員長の平沼辰雄氏は、「農商工連携なども含め、環境共生型コミュニティーを地域から構築していきたい。そのことは中小企業憲章がめざす新たな社会づくりの土台になる」と、「同友エコ」に参加し、一層の環境経営の推進を、と呼びかけています。

「中小企業家しんぶん」 2011年 1月 15日号より