憲章を軸とした産業政策を―TPP学習例会【静岡同友会志太支部】

 静岡同友会志太支部は2月14日、駒澤大学経済学部の吉田敬一教授(中同協企業環境研究センター座長)を講師にTPP学習例会を開催、52名が参加しました。

 吉田教授は地域経済や中小企業の発展を前提とした中小企業憲章の精神の立場に立ち、グローバル展開企業を主軸にした新成長戦略構想のTPP参加に対して、慎重な姿勢を示しました。

 また「日本は既に12カ国とFTA(自由貿易協定)もしくはEPA(経済連携協定)を結び鎖国状態ではなく、さらにTPP加盟9カ国のうち6カ国とFTAを締結している現状を踏まえ、TPPは実質の日米FTA構想と言える」と説明。TPP参加は大企業の生産拠点を国内から海外に促し、輸出が増えることよりむしろ現地からの逆輸入が増す可能性を示唆しました。

 さらに「アメリカ主導の経済構想より、アジアの中の日本として、TPP問題に見られる急激な自由貿易圏の拡大よりも、ゆるやかな自由貿易圏を創(つく)る過程のほうが日本経済の利点が大きい」と、ASEAN+6で十分な協議をして、RCEP(域内包括的経済連携)、東アジア広域自由貿易圏へ段階的に広げていく流れを説明しました。

 参加者からは「推進の立場であったが、TPPの捉え方自体が変わった」「中小企業憲章を軸にした考えは、TPP問題だけではなくとも大切な要素」などの感想がありました。

 最後に吉田教授は「中小企業主体の産業構造を念頭に踏まえ、そこから活路を見いだすためには、先進国日本の高いモノづくりの技術やこだわり、民族文化を衣食住製品に組み込んでブランド化すること。中小企業の自然エネルギーなどの新分野の研究開発や企業間ネットワークを強化し、日本の生活文化を発信する地域密着の地場産業を振興することこそ中小企業憲章の展望」と締めくくりました。

「中小企業家しんぶん」 2012年 3月 5日号より