100年後も必要とされる農業を目指して (有)十勝しんむら牧場 代表取締役 新村浩隆氏(北海道)

事業継続のため6次産業化

 7月19~20日に北海道帯広市で「“食と農”連携グループ全国交流会inとかち」(中同協企業連携推進連絡会“食と農”連携グループ主催)が開催されます。第1分科会の見学先である(有)十勝しんむら牧場(新村浩隆代表取締役、北海道同友会会員)の実践を紹介します。

循環型酪農スタイルの確立

 北海道十勝の北西部に位置する上士幌町。十勝しんむら牧場は140頭の乳牛の放牧酪農と乳製品の製造・販売などを行っています。富山県から入植し、1937年に酪農業を開始、4代目となる新村浩隆社長が代々続いた舎飼い経営から、放牧酪農に転換したのは1994年のことです。

 それまで漠然と行っていた草地管理では、土壌中の生態系が乏しく土の質が悪くなり、牛も牧草を思うように食べませんでした。そこで畑ごとに土壌分析し科学的に肥料を入れるなどの努力を重ね、3~5年をかけて「生きた土づくり」に取り組みました。牧草を牛が自由に食べ、その牛の排泄物を土壌微生物が分解し、健康な土が作られ、良い草を育てるという循環型の酪農スタイルを確立しました。「牛を本来の姿に戻すことで健康な牛を育てる」という目的から始めた取り組みは、牛乳の品質の向上、病気などの減少によるコストの削減にもつながり、大きなメリットを生み出しました。

6次産業化への取り組み

 「企業の最大の目的は続けていくこと」と語る新村社長は、安定した経営のツールの1つとして13年前より6次産業化に取り組み始めました。

 牛乳の良さをシンプルに伝えることができる商品を作りたいと考えていたところ、知人からフランスで一般的な商品でありながら今まで日本にはなかった「ミルクジャム」を紹介され、2000年に日本で初めて製造・販売します。現在、牧場で生産した牛乳の約3割をミルクジャムなど自社加工の乳製品に使用しており、自らが価格決定権を持つ商品を開発することで安定した経営につながっています。

 2005年には牧場内に「牧場のショールーム」をコンセプトにしたイートインスペース「クリームテラス」をオープン。年間約6000人が訪れる人気スポットとなっています。

今を支える人とのつながり

 「ミルクジャムの開発を始めたのも人のアドバイスがあったから。今があるのは人とのつながりが一番大きい」と語る新村社長。同友会には24歳の時に入会し、17年が経ちました。農業経営部会を中心に勉強会に積極的に参加し、先輩経営者の経験やアドバイスから多くのことを学んだそうです。また自分の経営に対する想いを成文化するために、経営指針作成に取り組みました。

“食と農”の連携が新たな可能性を切り拓く

 新村社長が副部会長として活動するとかち支部農業経営部会は設立25周年を迎え、7月19~20日には「“食と農”連携グループ全国交流会」を設営します。全ての分科会が十勝の農業を五感で感じることができるフィールドワーク型見学分科会となっており、十勝しんむら牧場も第1分科会「6次産業化実践コース」で見学先になっています。新村社長は「農業の現場だからこそ実現できる6次産業化の姿をぜひ見に来てほしい」と呼びかけています。

「“食と農”連携グループ全国交流会」の詳細はhttp://tokachi-obihiro.doyu.jp/(「同友会とかち」で検索)

「“食と農”連携グループ全国交流会」の詳細はhttp://tokachi-obihiro.doyu.jp/(「同友会とかち」で検索)