経営者として地域への恩返し (株)ITAC 代表取締役 糸数 久美子氏

【輝く女性経営者!】

 各同友会で女性部が発足され、元気な女性経営者の活力あふれる姿が目立ちます。女性経営者の生き様をテーマに、経営者としての苦労や同友会の学びを紹介していきます。

経営者婦人から経営者へ

 夫の税理士事務所開業と同時に一緒に働き始めました。税務知識が乏しい状態で、決算書や申告書を作成しました。検算をしてもらうために夫に提出しても修正点を全く指摘してくれない。「絶対に直されない申告書を作ってやろう」という気持ちで取り組みました。2~3年で下書きなしで申告書を作成できるようになり、私にとって当然のことのように思えましたが、普通ではなかったようです。

 その後計算部とコンサルタント部門が一体となって独立するとき、「これからは女性の時代」ということで(株)ITACの社長となりました。30代前半のことです。

 創業当時からパートナーとしての立場が私の原点です。この感覚は今も変わりません。

同友会で学ぶ組織や考え方

 夫(糸数哲夫・沖縄同友会顧問)が沖縄同友会の設立に携り、60番目の会員として入会しました。沖縄同友会の女性部「碧の会」の運営や同友会の役員を担うなかで組織のあり方や考え方を学びました。時には意見の衝突や反対意見もありますが、お互いに納得するまで話しあいをして物事を決めるのが同友会です。その姿勢は企業でも同じです。

 自社は部門からの独立ですが、同友会に入会し労使見解を学ぶ中、経営者と社員の立場の違いはあっても互いに尊重しあわなければならないことに気づきました。心を開き、話し合うことが大切です。

地域の牽引役に

 愛知県出身の何もわからない私を地域の皆さんが暖かく迎えてくれました。40年前の愛知県はご存知の通り大企業も多く、共稼ぎという感覚があまりなく女性は結婚したら専業主婦が当たり前でした。女性が働くという考えを教えてくれたのは沖縄の風土です。中小零細企業が夫婦で助け合いながら働き2つの財布を持つという考え方は女性が働く今でこそ当たり前ですが、当時としては先進的な考え方でした。

 同友会の代表理事として金融アセスメント法制定運動や中小企業振興基本条例制定運動に関わりました。沖縄県では全議会で金融アセスメント法に関する意見書が採択されました。当時は全国で初めてのことです。中小企業振興基本条例も9割を占める中小零細企業が元気になることが地域の発展につながります。その牽引役は中小企業家同友会だからできる。また、しなければならないと思います。

私は「白鳥(しらとり)久美子」

 私は同友会の代表理事になり、会外からも実に多くの役職をいただきました。しかし、苦労とは思いませんでした。白鳥は水上では可憐で美しい鳥ですが、水中では必死に足をバタつかせ水をかいているのです。周りに見せる美しさの影に潜む、人には見せない努力。それが女性の美しさであり、ロマンだと思います。

 ボランティアで朝市に参加し、新鮮な地元野菜の販売を手伝っています。新しいつながりが生まれ、次なる目標もできつつあります。今後も可能な限り挑戦し続けたいと思います。

「中小企業家しんぶん」 2014年 11月 5日号より