農家の娘がめざす経営 合同会社三宅牧場まきば 代表社員 三宅 静恵氏(福岡)

合同会社三宅牧場まきば 三宅 静恵氏

 三宅牧場は筑紫野市の南西部にあり、畜産を主軸に米や牧草の生産も行う農家です。大家族農家の3姉妹の長女に生まれ育った三宅氏は、跡取り娘という周りからの期待に反発するように、農業とはまったく違う学校に進み一般企業に就職しました。

 しかし1度離れてみると、家族が協力してこだわりの農産物を育てる姿は生き生きと見え、一般企業では感じることのできないものがあると、すぐに会社を退職し農業の仕事に就きました。その後、結婚し2人の子どもを持つ母となり、日々子育てに専念する一方で、生産物に対する思いが湧いてきます。

 「こだわりのお米を作っているのに売価は安く、出荷すれば他のお米と混ぜられてしまう。なんとかしたい」。今の自分にできることが何かないか?と考え、お餅の加工販売を始めました。自家用に作っていたもち米を使って、自宅アパートのキッチンに家庭用餅つき機を持ち込み、作ったお餅を直売所で販売してみました。

 お餅の売上は順調に伸び、正式に加工所を開設。ママ友の雇用もはじめ、事業を拡大していきました。3人目の子どもの出産を機に法人化します。働く人の環境整備が大きな理由でした。子どもをもった女性が働きやすい職場をめざし、それぞれのスタッフのペースにあったシフト組みなどを実践。気づけば10年が経っていました。

 それまで勘を頼りにやってきたという三宅氏は、経営に関しては素人であるため勉強の必要性を感じます。そんな時、同友会を知りすぐに入会、経営指針書を作成しました。指針書に落とし込むことにより、より一層スタッフの大切さを痛感します。

 2014年度農山漁村男女共同参画優良活動表彰の次世代を担う若手地域リーダー部門にて、農林水産大臣賞を受賞します。同友会で経営を学んでいることも受賞理由の1つに挙げられました。起業時は自分でできる範囲で何かできればと思っていた三宅氏。10年を節目に会社も自分自身も変わり始めています。

一人ひとりが輝ける場所

 子どもを持った女性が働きやすい職場をめざしている三宅氏ですが、もともと男性も女性もなく家族が協力して家業を営んでいたので、女性活躍という考えはあまりなかったと言います。「私が思うことは、女性活躍ということより働きたいと思う人たちが働ける、社会に出ていける、そういう場でありたいということです。農家の娘の私が、加工という仕事と出合うことでやりがいを見つけたように、一人ひとりが自分らしく輝ける場所であってほしい」。そのために、まだまだ勉強が必要と語ります。

経営理念

(経営理念)
安心・安全・美味しい食をお届けします

(行動理念)
1、私達は子供達に安心して食べさせられる食品を作ります。
1、私達はお客様の細かいニーズに応えます。
1、私達はスタッフの家族も幸せになる職場づくりをします。

会社概要

資本金:300万円
年商:3,500万円
社員数:9名(うちパート・アルバイト7名)
事業内容:地元筑紫野育ちのお米で餅等の加工品を製造販売しています
URL:http://www.miyakefarm-makiba.com

「中小企業家しんぶん」 2016年 3月 5日号より