日本の中小企業と同友会の女性活躍推進の取り組み~中小企業家同友会全国協議会(中同協) 事務局長 平田 美穂

(Emergence of Women in Bisiness & SME Programs that Support Women in Bisiness)

 3月18日にニューヨークの国連本部で開かれた「女性の地位委員会」(CSW)サイドイベント(国連日本政府代表部とNGO共催、4月5日号既報)での平田美穂・中同協事務局長のスピーチ全文をご紹介します。当日は、中小企業憲章や労使見解の英語版も配布されました。

将来が不安で子どもを産めない

 現在、日本では賃金の低い非正規雇用が4割を超えました。正規雇用者の約7割は男性、非正規雇用者の約7割が女性です。

 日本の貧困率は16%とOECD諸国のなかで4番目に高く、GDPに占める教育機関への公的支出の割合は3・5%で、OECD32カ国中、6年連続で最下位です。その結果、将来不安が原因で、子どもを産まない女性が年々増えています。2011年から日本は人口が継続して減少する「人口減少社会」となりました。

中小企業は地域に根を張る植物

 日本では企業数の99%が中小企業で、380万社。労働者の7割が中小企業で働いています。法人の売上高では44%ですが、付加価値額は54%を中小企業が占めています。

 大企業は獲物(利益)を探して移動する「動物」です。しかし、中小企業はその地域に根をはり、仕事をつくり、雇用を生み、地域を活性化していく「植物」です。この小さな1社1社が日本経済を支え、第2次世界大戦後、世界の経済大国といわれる日本を作ってきました。

中小企業は「人」が財産~女性も活躍

 雇用者に占める女性の割合は、小規模企業ほど高50%を超えていますが、、女性の正社員1人当たりの子ども数が、小企業ほど多く、女性の管理職の割合も小規模企業ほど多くなっています(図1)。

 女性の雇用と同様に小規模企業ほど高齢者雇用の割合、障害者雇用も同様に高いのが特徴と言えます。

 日本の中小企業には100年以上、事業継続している企業があります。中小企業は、人材の育成と環境の変化に対応した新しい仕事づくりに長けています。だからこそ「人」が何よりも大切な財産なのです。日本の中小企業経営者はそのことを自覚し、日々、経営能力を磨き、企業変革を進めているのです。

自主的に活動する「同友会」=NGO

 さて、これらの経営者が加入している中小企業家同友会の活動について紹介します。

 中小企業家同友会は、中小企業家70名によって1957年に東京で創立されました。今では47都道府県に拠点があり、4万5000を超える会員がいます。女性経営者の割合は11%、5000名です。また、非政府組織で、会員の会費収入で成り立っています。

 同友会は、「よい会社をつくろう(自主的近代化)、よい経営者になろう(自主的な努力)、よい経営環境をつくろう(日本経済の自主的・平和的な繁栄)」の3つの目的のもと、会員自身の運営で年間7000回のワールドカフェ方式のセミナーなどを開いています。中小企業家同友会全国協議会は、このような全国にある同友会の中核の役割を果たしております。

 毎年、開催している500名規模の女性経営者全国交流会は感動的です。

世界に先駆けてつくられた「労使見解」

 「中小企業における労使関係の見解」(略称「労使見解」)は、第2次世界大戦後、日本が復興の夜明けを迎え、急激な産業の発展や、大企業で激しくなっていた労使紛争が中小企業へ及んだことがきっかけで、1975年に発表された文書です。

 経営者が労働者を経営上のパートナーと考え、強靭な企業体質とするためには「実際の仕事を遂行する労働者の生活を保障するとともに、高い志気のもとに、労働者の自発性が発揮される状態を企業内に確立する努力が決定的に重要である。そして常に労働環境の改善を優先して考える」というものです。今でもこのテキストは同友会で活用されています。

 1999年に国際労働機関(ILO)が「ディーセントワーク」を21世紀の目標として発表しましたが、その24年前に私たち中小企業の団体がその指針を持っていたというわけです。会員は、自分自身の企業で、労働者がその力を発揮できるように環境を整備し、顧客の期待以上のサービスや商品を提供することで、高付加価値型の仕事をするよう努力しています。

女性活用企業=持続可能な経済社会の主役

 最後になりますが、今の日本経済の活性化のカギを握るのは、いっそうの女性の活躍と、エネルギー自給率と言っても過言ではありません。世界の人口の半分は女性であり、その能力を引き出せる企業が、持続可能な経済社会の主役となるでしょう。同友会で学ぶ中小企業が増えれば、それは実現されます。

 政府によって2010年に閣議決定された中小企業憲章。その中心的な運動は同友会が担いました。「中小企業は、経済を牽引する力であり、社会の主役である」とうたわれています。

 2011年3月11日、日本は東日本大震災、その後の原発事故を経験しました。同友会ではエネルギー政策にも関心を持つようになりました。日本のエネルギー自給率は6%です。

 中同協は「中小企業家エネルギー宣言」を提案。省エネ、地域内熱供給、再生可能エネルギーの生産はすべて中小企業の仕事につながります。

 地球環境にやさしく、人にやさしい持続可能な社会にしていくためにも、女性自身が意識改革を進め、社会を変えていく主体者として、積極的にその役割をはたしていきましょう。

「中小企業家しんぶん」 2016年 4月 25日号より