築地の歴史、水産業の未来とともに

東京魚類容器(株) 代表者取締役 原 周作氏(東京)

 当社は築地市場内で水産仲卸業者様をメインに、毎日約3000個出荷する発泡スチロールやダンボール箱などの包装資材を販売しており、築地の水産市場と共に歩んできた会社です。

水産業の衰退と市場の変化

 農林水産省の「卸売市場データ集」によると1989年に約874万トンあった水産物の総流通量は2010年には約660万トンと減少しており、国民の消費量の減少が反映しています。

 また、これまで水産物の多くは漁師が獲ったものが1次問屋(荷受)、2次問屋(仲卸)という卸売市場を経由して飲食店やスーパーなど小売店に並んでいましたが、卸売市場経由率は1989年に74・6%だったのが2010年に56・0%に減少しており、大型産地への集中によるブランド化、スーパーやコンビニチェーンへの直接販売、観光販売などが増えています。

 築地市場の水産物の取扱数量も、2002年に約72万トンでしたが2015年に46万トンに減少、築地市場で営業する仲卸業者数は2010年に1080業者だったのが2014年に651業者に減少しており(東京都中央卸売市場 市場関係資料)、市場関連業者にとっては縮小傾向のなかでどのように継続していくのか、戦略が問われています。

豊洲移転の問題

 こうした中、築地市場の江東区豊洲地区への移転が計画され、それに伴い当社も2016年11月に豊洲市場へ移転する予定でした。

 築地市場は23ヘクタールの広さから、豊洲市場の40ヘクタールの広さへと敷地が拡大しますが、移転する仲卸業者は築地の現在の700業者のうち400業者にとどまり、残りの業者は別の場所への移転や廃業が見込まれています。

 小池都知事は移転延期を判断しました。今後、(1)移転の時期、(2)安全対策(食の安全、働く人の安全)、(3)物流、アクセス、(4)店舗・倉庫の設備が再度、精査されていきます。経営者である私としては、どのような状況になっても対応できるように対策し、よりよい会社となり、よりよい市場となるよう貢献していくよう心がけています。

採用と教育で100年存続の企業へ

市場を移動するターレットトラックに乗る原氏

 当社は新潟から出稼ぎに出てきた祖父が1948年に創業、築地市場内に倉庫を構え、買い物客から注文があり次第すぐに配達できることを強みにし、時代の変化にも対応して業績を伸ばしてきました。

 しかし90年代に入り金融バブルの崩壊で状況が一変、10年近くにわたり売上の減少傾向が続き、会社は苦境に立たされました。私は2005年に入社、業績の回復と同時に、高齢化していた社員の世代交代を進め、信頼関係を確立することが喫緊の課題でした。

 社員との信頼関係づくりは試行錯誤の連続でしたが、同友会で学び、社員と「共に育つ」会社にしたいと取り組みを重ねてきました。経営理念をつくり、理念に基づいた採用を進め、最近では共同求人活動で女性の新卒社員を採用しました。教育できる幹部の育成や組織化が重要だということに気づき、同友会の『経営指針作成の手引き』をテキストにし、経営指針を浸透させています。

 また、社員と一緒に企業変革支援プログラムに取り組み始めました。取り組みを通して会社の一体感が高まり、市場の中でも「若い人がいる元気な会社」と目されるようになっています。

 2014年には廃業する会社から頼まれてドライアイス販売事業を引き継ぎ、今年は同業者の業務の引き継ぎに伴い、本年度は過去最高の売上を目指せるところまで業績は回復しました。今後は、市場以外にも目を向けて、さらなる事業拡大も視野に入れています。

 「包装資材を通じて、日本の食文化発展に貢献し続けます」「共に学び成長し感謝しあえる会社を目指します」の理念にもとづき、笑顔で100年つづく会社を目標に、そのために単年度経営計画を社員と共に具体化し着手しています。

東京魚類容器(株)会社概要

設立:1948年
資本金:1,000万円
従業員数:16名
事業内容:包装資材販売
URL:http://gyoruiyouki.com/