『同友会運動の発展のために』から学ぶ 第8回

第1章 同友会理念について

第2節 同友会運動とは

(前回からの続き)

1、同友会運動とは

 同友会運動とは長期的な視点に立って同友会理念の実現をめざす運動です。よい会社、よい経営者、よい経営環境の実現を掲げる「同友会の3つの目的」を「自主・民主・連帯の精神」で取り組み、「国民や地域と共に歩む中小企業」をめざす壮大な運動です。

 同友会運動は、戦後の荒廃の中で、「日本経済の真の担い手は中小企業である」との使命感を持って復興に立ち上がった先人たちによって基礎がつくられ、戦後の歴史の試練を乗り越える中で、運動の理念を深化、発展させてきました。

 同友会運動は、社員とも同友会理念を共有することで大きな前進が可能となります。さらには国民および全人類的視点に立って進める運動であるといえましょう。

2、同友会がめざす「人を生かす経営」とは―根底に「労使見解」の精神

 同友会では、これからの時代のめざすべき企業像として、「21世紀型中小企業づくり」を提起しています。それは次の2点に集約されます。

 第1に、自社の存在意義を改めて問いなおすとともに、社会的使命感に燃えて事業活動を行い、国民と地域社会からの信頼や期待に高い水準で応えられる企業。

 第2に、社員の創意や自主性が十分に発揮できる社風と理念が確立され、労使が共に育ちあい、高まりあいの意欲に燃え、活力に満ちた豊かな人間集団としての企業。(1993年、中同協第25回定時総会・北海道「総会宣言」)。

 なお、「21世紀型中小企業」をめざす上で、欠かせないのが、「労使見解」の学習です。これは、1975年に中同協が発表した文書で、労使の信頼関係こそ企業発展の原動力であるとする企業づくりの基本文書です。

 同友会の「人を生かす経営」とは、この「労使見解」をもとにした「人間尊重の経営」のことを言います。それには「人間性」とともに、その裏づけとなる社会的責任や貢献度を示す「社会性」や「利益」を含めた「科学性」が不可欠です。そのために同友会では、まずは(1)経営者が経営姿勢を正すこと、そして(2)「経営指針」を成文化して実践することを企業づくり運動の柱にすえています。

 「経営者が経営姿勢を正すこと」は、「経営者の責任」を自覚することです。経営者である以上、いかに環境がきびしくとも、時代の変化に対応して、経営を維持し発展させる責任があります。「何のための経営か」を深め、公私混同しないこと、経理公開することなどをもとに、地域で信頼を得るよう努めることです。

 経営指針を実践する過程では、10年ビジョンを盛り込んだ経営指針を社員と共有し、計画に沿って労働環境の整備もしながら仕事を進めます。その中で人材採用・育成を行い、社長も社員も共に育ちあう社風をつくることで、自覚と誇りに満ちた社員が育ち、付加価値の高い仕事をしていくことができます。

 「3つの目的」の総合実践をめざす中で、これら一連の企業内での取り組みを「人を生かす経営」の「総合実践」としています。また、同友会ではこれらに関連する経営指針成文化・実践、社員教育、共同求人、障害者雇用の取り組みを連携して行うことを推進しています。さらに「企業変革支援プログラム」で実践状況を確認し、企業変革が進むように会員がかかわりあい、励ましあうような取り組みが進められています。

(2015年中同協第47回定時総会決議・岩手)

(次回につづく)

「中小企業家しんぶん」 2016年 11月 15日号より